想定外の学費負担、オンラインゲームへの重課金に悲鳴

度重なる学費の負担に加え、大学に入って息子に渡していたクレジットカードはオンラインゲームの課金で毎月多額の請求が続き、Aさんの家計に大きな影響を与えました。その金額は累計で300万円を超える額になっていたのです。

「大学に入ったら必要になるだろうからと渡しておいたクレジットカード。毎月多額の請求が来ていることにしばらく気が付かなかったんです」

請求に気が付いた後も、息子が消費者金融から借金をすることや自分や妻への暴力につながることを懸念し、無理に止めることもできないでいます。

これから受け取る予定の退職金を使って住宅ローンを完済する予定でしたが、そうもいかなくなりました。Aさん夫妻は老後に向けた資金を貯めるべき時期に、高額な出費の負担が重なり、老後資金の計画が大きく狂ってしまったのでした。

息子のオンラインゲーム中毒が招いた深刻な状況

厚生労働科学研究が行った調査では、ネット依存が疑われる中高生の数は推定値で2012年の52万人から2017年の93万人、割合も全体で7.9%から14.2%へと大きく増加しているという結果が出ています。このようなネットやゲームへの依存の社会問題化を受け、2019年にはWHO(世界保健機関)が「ゲーム障害」を正式に国際疾病として認定しました。

そしてゲーム障害は様々な問題を引き起こします。今回のご相談者であるAさんの息子の大学生活に大きな影響を及ぼしているのも、オンラインゲームへの依存によるゲーム障害と考えることができます。オンラインゲームにのめり込むあまり、夜更かしが増え、授業に出席しない日が多くなりました。

Aさんは「ゲームばかりでは将来のためにならない」と感じながらも、可愛い一人息子に厳しい言葉をかけることができず、Aさん夫妻は無理を重ねて学費の支払いやゲームへの課金を続けてしまいました。この息子に対する「甘さ」が、さらに負担を重くしたと言えるでしょう。

久里浜医療センター「ゲーム障害について」のデータより筆者作成
[図表] 久里浜医療センター「ゲーム障害について」のデータより筆者作成