近年、抑うつの症状がみられる子どもが増加傾向にあります。これは、さまざまな社会的変化などの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。子どもの抑うつは、本人の心身だけでなく、社会全体にも大きな影響を与えます。学業成績の低下や不登校といった教育問題だけでなく、将来的な労働生産性の低下や、医療費の増大といった経済的な負担も生み出す可能性があります。また、抑うつは、自殺リスクを高めることにもつながり、社会全体にとって大きな損失となるでしょう。本記事では、子どもこころ専門医・指導医である舩渡川智之氏監修の書籍『思春期の子の「うつ」がよくわかる本』(大和出版)から、子どもの抑うつについて解説します。
深刻化した問題の最後にうつ病の症状があらわれる
ただ、実際の医療現場で「うつ病」と診断するケースが多いかというと、そうでもありません。精神疾患を診断するとき、前述したDSMなどの国際的な診断基準に照らし合わせますが、うつ病と診断するには2週間以上持続的に抑うつ状態が継続しているかどうかが問われます。子どもの場合。その間に別の問題が起こることが多いのです。
食事がとれなくなり、体重が減っていれば摂食症の診断が、四六時中ネットやゲームをやり続けていればゲーム依存が先行してあらわれ治療が開始されていることがあります。また、さまざまな症状があらわれたのちに、不眠や食欲低下、やる気がでない、起き上がれないといった「うつ病特有の症状」が顕在化するケースもあります。
舩渡川 智之
子どもこころ専門医・指導医