化学賞は「コンピューターによるタンパク質のデザインと構造予測」へ
化学賞では、アメリカ、ワシントン大学のデイビッド・ベイカー教授と、Googleのグループ会社である「DeepMind」社のデミス・ハサビスCEO、研究チームのジョン・ジャンパーの3氏に贈られました。ベイカー教授は、AIにより新たなタンパク質を設計することに成功。ハサビス氏とジャンパー氏は、アルファフォールドというAIモデルを開発し、これまで研究者たちが特定してきた2億個にのぼるタンパク質の構造を予測することに成功したのです。タンパク質がなければ生命は存在できず、タンパク質の構造を予測・独自の設計ができるようになったことは、人類の最大の利益であると評価されています。
Google、ノーベル賞を席巻…先端科学研究における産業界の役割が増大
アルファフォールドによりタンパク質の構造が予測・設計できるようになり、たとえば創薬の場面でも、実験をして調べなくても素早くコストをかけずに研究が行えるようになりました。すでにAI研究者たちだけのものではなくなり、生物を研究している人が実際に使用している段階になっています。
ハサビス氏は2010年にDeepMind社を立ち上げ、2014年にGoogleの親会社、アルファベットの傘下に入りました。2015年には囲碁コンピューターソフト、アルファゴーを発表し、世界トップクラスの棋士に勝利したことを記憶されている人も多いかもしれません。技術の飛躍発展には、学術界と産業界が協力していくことがますます必要になりそうです。
日本企業では、いまだ外との交流をよしとせず自前で創り上げようとする気風が残っており、アメリカのようにアカデミアと企業が一体的に研究を進める雰囲気とはまだ違い、課題が感じられています。AIにおける競争においても、官民上げて協力・協創関係を築くことが、今後日本が勝っていくために必要になりそうです。