仕事に打ち込み外で懸命に働いてきた人も、定年を迎えれば家にいる時間が増えるでしょう。そんなとき、夫婦の関係がセカンドライフに与える影響は決して小さなものではありません。本記事では、Aさんの事例とともに熟年離婚のライフプランへの影響について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
65歳からは「年金月20万円」の元消防署長夫…仕事一筋・浮気ナシ、尽くした現役30年。定年祝いに温泉旅行券を照れながら妻に渡すも、一転、破り捨て大修羅場と化したワケ【FPが解説】
夫婦のすれ違い
家の中の動線は交わることがなく、まるで一人暮らしをしているかのようです。ただし、妻はこれがいままでと変わらず当たり前だといわんばかりに毎日を過ごしているように見えます。
Aさんの65歳時の年金は公務員ということもあり、月20万円となっています(妻の年金は含まず)。厚生労働省によると、2024年度の厚生年金保険は夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は月額23万483円でした。
妻の年金額(老齢基礎年金の満額分)を除くと月14万4,483円、標準より高いことがわかります。しかしながら、離婚したらどうなるでしょう。年金分割によって婚姻期間中の上乗せ部分は按分割合によって半分になり、財産分与で貯蓄も退職金も半分になり、老後破産になる可能性もあるでしょう。
すれ違いのままか離婚するのがいいのか、仕事の苦労が終わったのに、家庭での居場所がなく生活することに苦悩することになりました。
仕事一筋だった夫の居場所
現在、65歳のAさんは、家に居場所がないため、近くの公園を散歩したり、大型スーパーのフードコートで時間を潰したり、パチンコ店に朝から並んだり……。そんな日々を過ごしています。仕事一筋だったAさんは気分転換になるような趣味等もなく、今日はなにをしようかと時間を潰すことだけを考える毎日です。
妻の態度は変わらず冷めたままで、このまま妻は自分が先に亡くなるのを待っているのではないかと不安になってきます。
夫婦関係で崩壊するセカンドライフプラン
仕事だから、なにもいわずとも理解しているだろうと、家庭を任せっきりにした代償はあまりにも大きかったようです。いまだ妻に歩み寄る隙もなく、Aさんにとってはまさかのセカンドライフの幕開けに。大誤算となりました。今後、卒婚になるのか、復縁できるのかは時間をかけ、納得いくまで話し合いをするしかないのかもしれません。
もし、夫婦関係で、自分が養っている、なにも言わずとも相手はわかっているはずと思っている人はAさんのように寂しいセカンドライフになる可能性があります。また、仮に離婚した場合による財産分与は、セカンドライフに大きな支障をきたすでしょう。いまからでも遅くないので、お互い歩み寄る行動をとることをおすすめします。
参考資料
厚生労働省PressRelease「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001040881.pdf
三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表