日中の暑さが和らぎ、涼しさを感じるようになると、おいしいと感じる食べ物にも変化が訪れます。その好例として思い浮かぶのが、チョコレート。毎年秋の時期になると新作チョコが登場し、目新しいビジュアルやフレーバーに心躍らせる人は多いことでしょう。実は今、チョコレートの世界にフードテックの波が到来。今の時代に寄り添うような、新しい発想や技術のチョコレートが誕生しているのです。一体どんなチョコなのでしょうか……。そこで今回は、国内外におけるチョコレートの新技術に注目し、それらの特長や画期的な製造技術についてわかりやすくご案内していきたいと思います。
チョコレートにフードテックの波あり。あたらしいおいしさや生産性を可能にする最新技術とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

栽培から製造までを短期間・屋内で実現する「細胞培養チョコレート」

California Culturedは、カカオ細胞の培養技術を確立した[HU1] 。(提供:明治ホールディングス)
California Culturedは、カカオ細胞の培養技術を確立した[HU1] 。(提供:明治ホールディングス)

 

続いては、フードテックが先行しているアメリカの事例をご紹介しましょう。アメリカ・カルフォルニアに本社を置くCalifornia Culturedは、チョコレート原料のカカオを細胞培養によって生産することを可能にしています。

 

具体的にはカカオの品種を選択し、バイオリアクター(細胞の大量培養や生物反応を介した物質製造に用いられる大型タンク)のなかで、細胞を成長・増殖させます。そして1週間くらい後に、細胞を収穫して発酵・焙煎工程を施すことに。このプロセスは、栽培や収穫にかかる数ヵ月から数年という長い期間ではなく、1~数週間で完了することができ、カカオ農業の部分を屋内ラボで行えることになるのです。

 

培養チョコレートはまだ認可されていないものの、同社は現在、機能性成分を豊富に含むカカオ細胞の培養技術を最適化し、早くて2024年度中に製品を市場に提供できるよう準備を進めています。また同社に対し、明治ホールディングスが2度の出資を行い、提携関係を締結。今後は培養カカオ粉末を明治に提供し、チョコレート味の食品に使用する予定とのこと。

 

カカオ農家の多くは、木の高齢化や病虫害、農業資材入手の難しさ、栽培技術の周知不足が収穫減につながり、十分な収入を得ることができません。また国や地域によって、児童労働や森林破壊などの社会課題を抱えており、カカオ資源の枯渇が憂慮される状況に。これらを解決する手段として、細胞培養チョコレートが注目されており、明治ホールディングスもこれらの課題を解決するために積極的な取り組みを行なっています。