日中の暑さが和らぎ、涼しさを感じるようになると、おいしいと感じる食べ物にも変化が訪れます。その好例として思い浮かぶのが、チョコレート。毎年秋の時期になると新作チョコが登場し、目新しいビジュアルやフレーバーに心躍らせる人は多いことでしょう。実は今、チョコレートの世界にフードテックの波が到来。今の時代に寄り添うような、新しい発想や技術のチョコレートが誕生しているのです。一体どんなチョコなのでしょうか……。そこで今回は、国内外におけるチョコレートの新技術に注目し、それらの特長や画期的な製造技術についてわかりやすくご案内していきたいと思います。
チョコレートにフードテックの波あり。あたらしいおいしさや生産性を可能にする最新技術とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

ドイツで生まれたカカオ不使用のチョコレート

「ChoViva」HP(https://choviva.com/en)より引用
「ChoViva」HP(https://choviva.com/en)より引用

 

最後にご紹介するのは、カカオを使わずにおいしい代替チョコを再現させる技術について。ドイツのミュンヘンに本社を置くPlanet A Foodsは、独自の発酵・焙煎プロセスを用いることにより、糖分を30%カットしながら、ココア不使用のチョコ風味製品「ChoViva(チョビバ)」を開発。口のなかで溶けるような食感と濃厚なチョコレートの風味を強みに、すでに多くの小売店にて製品化されています。

 

製造方法はカカオ豆と同様に、植物性原料を発酵させ、チョコレートのような自然の風味を再現させるというもの。原料には、オーツ麦、ヒマワリの種、砂糖、植物性脂肪など、厳選された天然食材のみを使用。オーツ麦とヒマワリの種を古いビール醸造の伝統の発酵原理と同様の方法で精製し、ゆっくりとロースト。これらの成分を濃縮加工することで、ココアパウダーを思わせる典型的なチョコレートの特徴が生まれます。チョビバ濃縮物は2段階で粉砕され、チョコレートのように使用することができるようになると言います。

 

チョコレートは多くの人に愛されているものの、そのおいしさの裏には前述のような森林破壊や貧困問題に加えて、膨大な二酸化炭素排出量などの問題を抱えています。同社では持続可能な地元の食材をベースにした製品作りによって年間 5 億トンの CO2 を削減する取り組みを行っています。

 

チョコレートを取り巻く世界が変わりつつあることがおわかりいただけたでしょうか? 今回のチョコレートのみならず、食品の開発・製造を行うためには、ヒトと環境への配慮は欠かせないでしょう。そしてこれらの課題を解決してくれる技術が続々確立しつつありますから、新しいチョコレートの世界を身近に楽しむ時代はもう目の前に広がっているのです。

 

 

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<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。

 

東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。