ドラゴンボールの「筋斗雲」のようなロボットが登場する可能性
自由自在なロボット
さらに時代が進めば、ドラゴンボールの「筋斗雲」のような変幻自在なロボットも実現するかもしれません。平田教授の研究プロジェクトでは、「ロボティック・ニンバス」という適応自在なAIロボット群の開発を目指しており、これは筋斗雲(=ニンバス)のように、呼べばすぐに来てくれて、利用者にまとわりついたり、ちぎって体にくっつけたり、目的に応じて複数のロボットを大きな集合体にすることも、必要な支援だけを行うコンパクトな形にもなることができるロボットなのだとか。
使用することで、利用者の能力を拡張してくれるもので、平田教授は、50年後はハードウェアの技術や素材、ロボット制御の進化により、そうしたロボットを開発することが可能になっていると予測しています。
人はまだ必要?未来の老人ホームの在り方
こうした数々の便利なテクノロジーが導入された場合、未来の老人ホームはどのような形に変化するのでしょうか。
まず考えられるのは、介護士などの“人”の役割の変化です。
排泄の支援や移動の支援など、これまで介護士が行っていた仕事をロボットがある程度担えるようになるため、平田教授は介護士の仕事の内容が変化する可能性を指摘します。
たとえば、高齢者がロボットを使う際にサポートしたり、ロボットが提案するリハビリの内容を最終的に調整して利用者につないだり……という具合に、人と人とのコミュニケーションを重視した仕事へとシフトする可能性が高そうです。
また、そもそも介護士という仕事がなくなるのではないかという疑問が生まれるかもしれません。これに対し、平田教授は施設が存在する限り、人が施設からいなくなることはないだろうと予想しています。
施設に人が必要なくなった場合には、そもそも施設自体の必要性がなくなり、高齢者の介護はすべて在宅介護で事足りるでしょう。在宅以上の付加価値があるために施設を選択するという前提があります。
便利なテクノロジーが導入された結果、老人ホームに入居することで家にいるよりもできることが増え、より自分らしく活動することが可能になる……というわけで、まさに介護施設のひとつの理想といえるでしょう。
平田教授は、こうした理想を実現するためには、まずは「こういう世界にしたい」というビジョンを描くことが重要だと指摘しています。2070年にどのような老人ホームがある世界が理想なのか、それを利用者、介護者、技術者らがディスカッションしつつ描くことは、これから活力にあふれる超高齢社会を作るうえで、誰もが気に留めておくべきポイントといえそうです。