老後破産…定年後の年金生活において生活に困窮、破産状態に陥ること。一見すると、低所得の人に起きやすいことのように思えますが、高学歴・高所得の人であっても別の理由から破産に陥ることがあります。
マズイことになったぞ…最高年収2,000万円だった〈64歳元サラリーマン〉、高学歴・高所得エリートだったのに「定年退職後にお金がない」の残念な理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

給与ゼロのエリートが、どうしても止められなかったこと

退職金含めて8,000万円ほど。しかも郷田さんは独身。年金を受給するまで5年ありますが、十分すぎるお金があるので問題ないように思えるでしょう。しかし、なぜ定年から4年ほどで「お金がない」という窮地に陥ったのでしょうか。

 

現役時代から住んでいる賃貸マンションは家賃月30万円の2LDK。月々の支出は50万円程度(交際費除く)だとか。年間620万円、4年間で2,400万円ほど。一般人からしたら「もっと節約しないと」と冷や冷やしますが、そこは高収入を誇ってきたエリート。エリートはエリートにふさわしいライフスタイルがあるのでしょう。問題は、かっこにある通り交際費にあります。

 

――仕事を辞めても、昔からの付き合いは大切にしていて。ほぼ毎日外食のお誘いがありますし、毎週末はゴルフに行くのが習慣。旅行も好きで、結構行きますね

――もう給与収入はないのだから何とかしないといけないと思ってはいたんですが、なかなか実践できなくて

 

結論からいうと、お金がないのは単なる散財、無駄遣いが原因。一般の人からみれば、「はぁ⁉」と思う理由ですし、高学歴であれば「もう少し賢いお金の使い方ができるだろう」と考えます。しかし、高学歴・高収入の人のなかには、単なる散財で老後破産してしまう人も珍しくはないようです。なぜ散財をしてしまうのか……そのひとつの理由が、高所得の人ほど人付き合いが頻繁であること。

 

孤独・孤立の実態把握に関する全国調査、内閣府『令和5年人々のつながりに関する基礎調査』によると、多少の凸凹はあるものの、世帯の年間収入が高い人ほど孤独感をもたない*傾向にあります。孤独感をもたないのは、日ごろ人付き合いが活発だから。収入が高いからこそ、人付き合いにお金をかけられるのでしょう。一方、収入が低い人ほど人付き合いは希薄となり、社会から孤立してしまう傾向が強くなります。

 

*「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」の合計

 

【世帯年収別「孤独感の有無」】

100万円未満…46.0%

~200万円未満…42.3%

~300万円未満…39.8%

~400万円未満…38.6%

~500万円未満…39.2%

~700万円未満…37.6%

~1,000万円未満…36.8%

~1,500万円未満…30.9%

1,500万円以上…32.6%

 

郷田さんの場合、仕事を完全に辞めたあとも人付き合いはそのまま。給与収入がなくなったというのに、毎月の支出も現役時代のままで、毎月、膨大な交際費を支出し、8,000万円もあった資産もたった4年で底をついてしまったと、なんとも残念な顛末です。

 

「本当に途中、このままではいけないと思わなかったのですか?」と尋ねても、「そりゃ思いましたよ。どんどんお金がなくなっていくわけですから。でも人との関係ってなかなか切れません。わかるでしょ?」と郷田さん。お金の切れ目が縁の切れ目とはよくいったもの。本当に破産という結果を迎えれば、ようやく適正な家計運営ができるのかもしれません。

 

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