世界中で大きな問題となっている食品ロス。環境省によると、日本では、2022年度に約472万トンの食品ロスが発生したと推計されています。食品ロスの課題を解決する方法として、過去の売上データや気象データなどをもとに、最適な生産量や発注量をAIが予測したり、AIで在庫管理を最適化したりといったAI活用が注目されています。そこで今回は、AI活用で食品ロス削減を実現している企業の取り組みを紹介します。
発注数や在庫管理、商品の値引きもAIで…食品ロス削減をAI活用で実現する企業の取り組み サントリー食品インターナショナル提供

DXが遅れていた青果流通…需要予測システムで予測誤差率20.2%を実現

オイシックス・ラ・大地提供
オイシックス・ラ・大地提供

 

食品業界のなかでも特に、青果流通では、中間流通での介在者が多く、デジタル化やシステムの連携が難しいとされてきました。データの分断やサイロ化が起こりやすく、DXが遅れていることが大きな課題になっています。

 

そこで、食品宅配サービス「Oisix」などを運営する「オイシックス・ラ・大地」では、データ活用を専門とする組織(DMO)を立ち上げ、同社初となるAIを活用した「需要予測システム」を導入。購買者の行動、購買データ、レシピデータ、販促データなどを学習させることにより、精度の高い需要予測が可能になりました。なお、2023年11月のローンチ後、1カ月で予測誤差率20.2%(旧ロジックと新ロジックにおける相対改善率)を実現しています。

 

また、「需要予測システム」の導入で、最適な発注数および在庫数を把握できるようになり、欠品率や在庫回転率も改善。特に、在庫回転率が上がったことで、流通過程で発生する食品ロス削減につながっています。

自動発注サービスの導入で、予測が難しい日配品の発注数を自動算出

シノプス提供
シノプス提供

 

九州地方で展開する食品スーパーマーケット「食の蔵」では、全15店舗に需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」を導入予定。2024年3月より実店舗で実証実験をスタートし、現在、全店舗での本格稼働を目指しています。

 

ソフトウェアメーカー「シノプス」が開発した同サービスは、POSデータをもとにした1時間ごとの在庫や売上情報をリアルタイムで収集する「リアルタイム在庫」、天候やイベントなども加味して、時間帯別や45日先までの客数を予測する「客数予測」が可能。各店舗に合わせた発注数を把握できます。

 

また、賞味期限が短い日配品に特化した「日配」、常温で保存可能な加工食品に特化した「グロサリー」などの需要予測型自動発注サービスも採用予定。予測が難しい日配品とアイテム数が多いグロサリーの発注作業をシステム化し、最適な発注数をAIが自動算出することで、食品ロスの改善が期待されています。