世界中で大きな問題となっている食品ロス。環境省によると、日本では、2022年度に約472万トンの食品ロスが発生したと推計されています。食品ロスの課題を解決する方法として、過去の売上データや気象データなどをもとに、最適な生産量や発注量をAIが予測したり、AIで在庫管理を最適化したりといったAI活用が注目されています。そこで今回は、AI活用で食品ロス削減を実現している企業の取り組みを紹介します。
発注数や在庫管理、商品の値引きもAIで…食品ロス削減をAI活用で実現する企業の取り組み サントリー食品インターナショナル提供

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

店舗における余剰食品の発生を抑制…大手コンビニの次世代発注システム

ローソン提供
ローソン提供

 

コンビニエンスストアの大手チェーン「ローソン」では、2024年5月からAIを活用した次世代発注システム「AIカスタマイズドオーダー(通称:AI.CO)」の導入を開始し、7月に全国での導入を完了しています。店舗における適正発注の実現による販売機会のロス削減、また余剰食品の発生抑制による食品ロス削減につながる取り組みです。

 

同システムは、天候や在庫状況、販売実績など、店舗ごとのデータをもとに、商品別の需要予測と発注をサポート。2015年に導入されたセミオート発注に比べ、より各店舗の特徴を反映しており、各商品の品ぞろえや発注において精度の高いサポートを実現しています。

 

また、「どの商品を何円値引きするか」についても、AIを活用。これまでは、商品の値引きに対し、店舗の経験値に頼る部分が大きかったところ、同システムでは、在庫状況に応じた値引き額や値引き時間を算出。より効果的に食品を売り切ることが可能になり、各店舗における業務負担の軽減にもつながっています。

ダンボール破損による食品ロス…飲料メーカー各社が共同実証実験中

サントリー食品インターナショナル提供
サントリー食品インターナショナル提供

 

ペットボトル飲料などの輸送資材であるダンボールが破損しただけで、中身の品質に問題がないにも関わらず返品されてしまう食品ロス。「サントリー食品インターナショナル」「キリンビバレッジ」「コカ・コーラボトラーズジャパン」「セブン-イレブン・ジャパン」は、ダンボールの破損による食品ロス削減および物流課題の改善に共同で取り組んでいます。

 

これまでは、ダンボールに破れや角つぶれ、膨れなどが発生すると、商品の品質に関わらず、各社の倉庫ごとに目視で納品可否を行ってきました。そこで、「富士通」が開発したAIシステムを活用し、ダンボールの破損レベル判定を統一化。各社が判断基準を共有し、軽微な破損レベルの商品を流通させることで、食品ロス削減が期待できる施策です。

 

AIシステムの共同実証実験は、2023年6月より本格スタートし、2024年9月末まで実施予定。各社の倉庫担当者が破損箇所をスマートフォンで撮影し、撮影した画像をデータベースと照合。AIの判定に基づき、倉庫担当者が入荷や出荷の可否を判断する仕組みです。今後は、多くの企業に参画を呼びかけ、さらなるAI精度の向上と判定基準の標準化を目指しています。