日本が世界一の長寿国(※)であることはすでに広く知られている事実ですが、日本人の食事において心配されていることがあります。それは、「食塩摂取量(塩分摂取量)」。日本人の摂取量は1日約10グラム前後であり、世界保健機関(WHO)が推奨している5グラム未満の約2倍になっているのです。この状況に対し、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」では、推奨される1日の塩分量は男性で7.5g、女性で6.5g未満に。ただし高血圧や慢性腎臓病(CKD)の重症化を予防するための塩分量は男女共に1日6g未満に設定されています。つまり減塩対策は多くの日本人にとって重要な課題に……。対策を考えるべく減塩商品に目を向けてみると、従来のイメージとして少なくなかったのが、「減塩はつらい、おいしくない」という声。おいしさを我慢するようなものが多くあったのでしょう。しかし最近ではその概念を覆すような新しい減塩技術が確立されているといいます。そこで今回は“おいしい減塩”をテーマに、最新の注目事例をご紹介していきたいと思います。※WHOが発表した世界保健統計2023年版において、日本人の平均寿命、健康寿命ともに世界1位。(平均寿命:男性81.5歳で2位、女性86.9歳で1位。健康寿命:男性72.6歳、女性75.5歳で共に1位)
調味料は健康とおいしさを両立できる時代に…減塩技術の最新事例3つ キッコーマン提供写真

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

おいしい減塩技術を実現させる最新事例

①「キッコーマン いつでも新鮮」シリーズの減塩しょうゆ

(左から)「キッコーマン いつでも新鮮シリーズ」の減塩しょうゆ(著者撮影)
(左から)「キッコーマン いつでも新鮮シリーズ」の減塩しょうゆ(著者撮影)

 

まずは日本における定番調味料「しょうゆ」の事例からはじめていきましょう。一般的にしょうゆのおいしさは、色・味・香りのバランスが重要だと言われています。減塩しょうゆは味の重要な構成要素となる塩分が少ないために、その補い方が品質設計のポイントに。減塩しょうゆには一般的に2つの製法があります。

 

濃くつくって希釈する「希釈法」と、通常のしょうゆから塩分だけを取り除く「脱塩法」です。「希釈法」は濃いしょうゆをつくって希釈するため、香りが薄まり、やや物足りない風味になるという課題があります。一方、「脱塩法」はしょうゆの香りや旨みはそのままに、専用の設備で塩分だけを取り除く方法で、希釈法の弱点を補う製法です。

 

そのような従来の製法を大きく変えたのが、キッコーマンの「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」。同社は1965年に東京大学医学部からの要請で 「保健しょうゆ」を発売して以降、59年もの歳月で減塩しょうゆのおいしさを追求してきました。

 

いつでも新鮮シリーズの減塩しょうゆとしては現在4種類で、最も注目すべきは、特許製法を採用したリニューアル商品「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」です。

 

2024年6月にリニューアル、特許の新製法「超低塩法」を採用した「キッコーマン いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」(著者撮影)
2024年6月にリニューアル、特許の新製法「超低塩法」を採用した「キッコーマン いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」(著者撮影)

 

通常のこいくちしょうゆ(食塩分17.5%)に比べ同社過去最高の66%カットを実現。すでに2020年から発売されていた商品の製造工程を見直し、しょうゆ本来の旨みや香りをより感じられるようにリニューアルされました。大きなポイントになるのが、特許取得(特許5836466号)の新製法「超低塩法」。

 

従来の圧搾後に減塩する脱塩法や濃くつくって水で薄める希釈法とは異なり、 もろみの塩分濃度を超低塩で仕込む製法です。これを実現させたのは、超低塩でも発酵・醸造が可能な衛生面を最大限考慮した設備開発力、温度や発酵スピードの管理を可能にする高い技術力やノウハウにあり。この画期的な技術力によって、香りが薄まらず旨味成分を多く含む超特選規格での減塩しょうゆが完成したのです。