iX+(イクタス)』からの転載記事です。
※本稿は、テック系メディアサイト『おいしい減塩技術を実現させる最新事例
①「キッコーマン いつでも新鮮」シリーズの減塩しょうゆ
まずは日本における定番調味料「しょうゆ」の事例からはじめていきましょう。一般的にしょうゆのおいしさは、色・味・香りのバランスが重要だと言われています。減塩しょうゆは味の重要な構成要素となる塩分が少ないために、その補い方が品質設計のポイントに。減塩しょうゆには一般的に2つの製法があります。
濃くつくって希釈する「希釈法」と、通常のしょうゆから塩分だけを取り除く「脱塩法」です。「希釈法」は濃いしょうゆをつくって希釈するため、香りが薄まり、やや物足りない風味になるという課題があります。一方、「脱塩法」はしょうゆの香りや旨みはそのままに、専用の設備で塩分だけを取り除く方法で、希釈法の弱点を補う製法です。
そのような従来の製法を大きく変えたのが、キッコーマンの「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」。同社は1965年に東京大学医学部からの要請で 「保健しょうゆ」を発売して以降、59年もの歳月で減塩しょうゆのおいしさを追求してきました。
いつでも新鮮シリーズの減塩しょうゆとしては現在4種類で、最も注目すべきは、特許製法を採用したリニューアル商品「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」です。
通常のこいくちしょうゆ(食塩分17.5%)に比べ同社過去最高の66%カットを実現。すでに2020年から発売されていた商品の製造工程を見直し、しょうゆ本来の旨みや香りをより感じられるようにリニューアルされました。大きなポイントになるのが、特許取得(特許5836466号)の新製法「超低塩法」。
従来の圧搾後に減塩する脱塩法や濃くつくって水で薄める希釈法とは異なり、 もろみの塩分濃度を超低塩で仕込む製法です。これを実現させたのは、超低塩でも発酵・醸造が可能な衛生面を最大限考慮した設備開発力、温度や発酵スピードの管理を可能にする高い技術力やノウハウにあり。この画期的な技術力によって、香りが薄まらず旨味成分を多く含む超特選規格での減塩しょうゆが完成したのです。