業績不振などによって、割増退職金を提示して早期退職者を募集するケースは少なくありません。退職金が大きく上乗せになると聞いて、「このタイミングで辞めてしまおうか」と考えることもあるでしょう。しかし、後先考えずに早期退職をすると、その先に大きな後悔が待っているかもしれません。本記事では、早期退職に踏み切った年収1,200万円・元エリート会社員の木村武さん(54歳・仮名)を例に、早期退職で注意すべきポイントについて、南真理FPが解説します。
もう疲れたよ…。仕事の重責に耐えかねた54歳エリートサラリーマンが「早期退職すれば3,000万円」の募集に飛びついた結果、半年で大後悔したワケ【FPの助言】
勢いで辞めるのはNG!早期退職
その後、木村さんは妻とも家計や老後の話をしました。そして再度FPに会いに行くと、こう話しました。
「心身ともに疲れていたので、仕事を辞めてかなり回復できたのは事実です。でも、退職金の上乗せにつられて辞めてしまうという決断は間違っていたと後悔しています。負担の少ないポジションに移れないか頼んでみるとか、ちゃんと考えるべきでした。それと、実は早期退職の申し出を会社にしたあと、次の就職先の斡旋があったんです。勤めていた会社の関連会社で、定時で帰れる仕事で年収は500万円という提示でした。でも年収も半分以下になるし、とにかく休みたかったので断ったんですよ。それも後悔しています……。でも私、営業スキルには自信があるんです。なので、気持ちを切り替えて再就職を頑張ります。給料が下がることは受け入れて、体に無理なくコツコツ働きたいですね」
本記事でご紹介した木村さんのケースでは、退職金を含む約4,000万円の貯蓄があることに安心し、会社員時代と変わらない生活を続けてしまうと60歳になるころには貯蓄が底を突いてしまうという現実が待っています。
仕事に疲れてしまったタイミングで退職金3,000万円という大金を提示されたら、それにつられてしまう気持ちは分からなくもありません。しかし、会社を辞めた後に何がしたいのか、家計の収支はどうなるのかなど、事前にきちんと考える必要があったのではないでしょうか。
「収入がなくなったり減ったりしても、生活費を下げればいい」と思われるかもしれませんが、それまで続けてきた生活習慣はなかなか変わらないものです。自分ならどのくらい生活費を下げられるか考えて、その収入で家計が成り立つのかをまず確認しましょう。働き方の選択は老後の明暗を分ける大きな決断ですので、後悔のないようにしたいですね。