今、日本をはじめ世界でスマートシティ実現に向けた取り組みが進んでいます。ですが、その中身についてはあまり具体的なイメージがわかないのではないでしょうか。スマートシティの意義とはなんなのか、それを考えるためには「目指すべき未来社会の姿」から考える必要があります。
「シムシティ」の世界が現実に?スマートシティがつくる未来 (※写真はイメージです/PIXTA)

世界のスマートシティ、二つに一つは中国にある

スマートシティ建設を進めているのは日本だけではありません。世界各国で取り組みが進んでいますが、特に突出した動きを見せているのが中国です。前瞻産業研究院によると、中国ではスマートシティの取り組みを進める都市は749カ所に達しています。全世界のスマートシティ推進都市の過半数が中国にあることになります。

 

また、前述のとおりスマートシティはセンサーによる情報収集がきわめて重要です。低コスト、かつ電力消費が少ないIoT向けの通信規格としてLPWA(ロー・パワー・ワイド・ネットワーク、IoT向けの通信規格)があります。中国インターネット情報センターの統計によると、中国のLPWA回線数、接続機器数は2023年末時点で23億3200万台に達しています。こちらも世界の過半数を占めると推計されています。

 

中国通信機器・端末大手ファーウェイの本社ショールーム、スマートシティの展示。(2020年1月、筆者撮影)
中国通信機器・端末大手ファーウェイの本社ショールーム、スマートシティの展示。(2020年1月、筆者撮影)

 

さて、一口にスマートシティといっても、その取り組みは多様です。人感センサーを使って街灯をオンオフする省電化という取り組みから、部門を超えた行政データの連携により役所を転々としなくても、どこか一カ所の窓口を訪問すればすべての手続きが完結するという行政サービスなどさまざまです。

 

その中にはちょっとやりすぎのデータ連携もあります。広西チワン族自治区南寧市青秀区は昨年、新たな駐車場システムを発表しました。公共駐車場の料金を滞納しているユーザーに対して、一定額を超えるとコンピュータが自動的に裁判所にデータを送り、債務者リストに掲載するというものです。

 

データ連携と自動化という意味ではまさにスマートシティらしい機能なのですが、コンピュータが自動的に人間を訴えるという仕組みはあまりにも非人道的ではないかと炎上、撤回されました。

 

スマートシティには多くの利便性がありますが、一方で個々の人間の事情を斟酌(しんしゃく)せずに機械的に判断してしまうこと、今までは収集できなかったデータが把握できてしまうことで軽微な過失でも大きな問題として扱われかねないという課題があります。

 

たとえば自転車の交通違反。自転車といえども立派な車両ですから交通ルールを遵守する必要はありますが、人通りが少ない道では多くの人がルールを守らない乗り方をしているのが実情です。そこに監視カメラをつけて、他に人がいようがいまいがルール違反は全員捕まえるというやり方をすれば、その場所を通る人はほぼ全員が犯罪者となりかねません。もちろんルールは守る必要はありますが、現在の慣習とどう整合性をつけるのかが問われているのです。