今後の医療がどのように変わっていくのか、そして私たちがどのようにその変化に対応できるのか、皆さんは考えたことがあるでしょうか? 日本の医療現場も、ほかの産業と同様にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進行しています。マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせる「マイナ保険証」の導入も、その変革の一部であり、将来的に皆さんの健康管理にも大きな影響をおよぼす基盤となります。本記事では、マイナ保険証の導入による変革と、それに伴うICT(情報通信技術)の活用について解説していきます。
叩かれがちなマイナ保険証だが…利用促進で近づく!? 新時代の「薬局」の姿 (※写真はイメージです/PIXTA)

生涯に渡って個人の健康データを管理、活用できるツール

ICTの進展がもたらす変革は、薬局業務の範疇にとどまりません。その1つが、クラウドなどを通じて患者個人の医療情報を一元管理する「PHR(パーソナル・ヘルスレコード)」です。PHRは、日本語で「生涯型電子カルテ」などと呼ばれるように、生涯に渡って個人の医療・介護・健康データを管理、活用できるツールです。

 

PHRでは、患者が自分の意思のもとに健康情報を医療機関などと共有することも可能です。これにより、それぞれの患者に応じた個別化された治療を受けることができます。かかりつけ医以外の医療機関でも正確な情報を迅速に得ることができるため、転院や緊急時の処置においても役立ちます。

 

また、生活習慣病などの慢性疾患をかかえる患者の、日々の生活習慣改善にも、PHRによる効果が期待されています。スマートフォンのアプリなどに血糖値や血圧といったデータが可視化され、適切なアドバイスが表示されることで、運動や食事など生活習慣の改善につながりやすいのです。

 

さらに、PHRでは医療機関をまたがって患者の情報を正確・迅速に確認できるため、問診や検査などの一部が省略・簡略化でき、医療費の抑制にも寄与します。

 

超高齢社会において労働人口が減少している現状では、現役世代にかかる負担がますます増加しています。ICTの活用により、医療サービスの効率化は喫緊の課題であり、PHRはそのなかで重要な役割を果たすことができるのです。

遠方の医師が自宅にいる患者の診察ができる時代へ

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

日本は南北に長く、約75%が山岳地帯で1万4,000以上の島々から構成される地理的に分散した国です。さらに深刻なのが、超高齢社会とそれに伴う労働人口の減少です。こうした課題を改善に導くにはICTの活用がカギとなります。

 

たとえば、遠隔診療システムを利用して医師が離れた場所から患者を診察し、調剤薬局との連携を図ることで、患者が自宅にいながら適切な医療を受けることが可能になります。労働人口が減少するなかで、ICTの導入は、限られた医療リソースを最大限に活用し、効率的かつ高品質な医療サービスの提供を実現していきます。