定年は延びている一方、ミドルシニアの離職は増加傾向

Aさんからことの経緯を聞いたFPは、まず「障害年金の請求」について説明しました。

「Aさんのようなミドルシニアの離職が増えています。なるべく長く働けることが最良ですが、それが難しくなった場合にも、あきらめることはありません。障害年金の対象となれば収入を得ることができます。

また、Aさんは現在休職中ですが、入社以来、厚生年金に加入しています。そのため、初診日の証明ができれば、障害等級3級で障害厚生年金が、より重い障害等級2級か1級の場合、障害基礎年金と障害厚生年金が受けられるようになります」

この説明を聞いたAさんは、通っている精神科の先生にも話をし、妻Bさんとともに年金事務所へ相談に行きました。そして、そこで障害年金について詳細な案内を受け、請求できる時期に改めて診断書など必要書類を整えて年金を請求。その審査には3ヵ月以上かかりましたが、障害等級2級と認定され、障害年金の支給の決定がされることになったのでした。 

Aさんは年間「約250万円」の年金を受け取れることに

Aさんの場合、障害基礎年金と障害厚生年金が支給され、また、65歳未満の配偶者Bさんがいるため、配偶者加給年金も加算されます。

障害基礎年金は年間81万6,000円(2024年度)支給され、一方、厚生年金の加入記録に基づいて計算される障害厚生年金については、Aさんの場合は140万円弱支給される計算となりました。配偶者加給年金は年間23万4,800円(2024年度)となります。

また、年金とは別に年金生活者支援給付金の対象となり、年間6万円程度支給されることが判明しました。これにより、合計250万円程度となります。最初に内科を受診した日が初診日と認定され、その初診日から1年6ヵ月経過した日(障害認定日)より年金を受給できるようになりました。 

休職してから健康保険制度より受けていた傷病手当金の支給は調整されるものの、障害年金などで年間250万円が見込めることになったAさんは、思わず「私はまだ、生きていてもいいんですね」「息子が自分に生きてくれと言っているようだ」と涙ぐみながら安堵の表情を浮かべていました。

結局、会社はそのまま退職することにはなりましたが、Aさんの障害年金と妻Bさんのパート勤務の収入でどうにか生活できるようになります。 

不測の事態により仕事が続けられなくなってしまうこともあるかもしれません。その結果、給与収入が得られなくなるケースはありますが、公的な制度から給付を受けられる場合もあるため、必要な手続きは早めに進めましょう。 
 

五十嵐 義典
CFP
株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役