65歳より前に年金を受け取ることができる「年金繰上げ受給」。老齢厚生年金の受給権者の利用はわずか0.9%にとどまります(厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和5年度)」より※65歳前の特別支給の老齢厚生年金の受給権者を除く)。今後利用者の増加が見込まれる年金繰上げ受給について、60歳男性の事例をもとに、制度のしくみと注意点をみていきましょう。
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年金月17万円が月13万円に…利用率0.9%の〈年金繰上げ受給〉を選んだ60歳サラリーマン「まったく後悔していません」と強気だが【社労士CFPの懸念】
60歳男性が「年金繰上げ受給」を選んだ理由
60歳の会社員Aさんは、妻のBさんと2人暮らし。2人の子どもはすでに社会人となり、それぞれ遠方で暮らしています。
Aさんは60歳で定年を迎えたあとも、引き続き働いています。にもかかわらず、本来65歳から受給できる老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を「繰上げ受給」により前倒しし、今年から年金を受け取りはじめました。
5年繰り上げたため年金は24%減額され、65歳開始なら月17万円だったところ、Aさんの年金受給額は月13万円。会社からの給与も60歳以前と比べて下がっています。
それでもAさんは、「自分の年金を元気なうちに使うことができるんですから。まったく後悔していません」と言い切ります。
Aさんが繰上げ受給を後悔していないと語るのには、次の理由があるようです。
「在職老齢年金制度」等の調整がない
まず、Aさんは再雇用により給料が下がりました。そのため、60歳以降働き続けても「在職老齢年金制度」による調整が行われません。また、雇用保険の高年齢雇用継続給付も支給されず、その受給によっての調整もないため、働きながらでも年金を満額受け取ることができます。
Aさんはこのまま、65歳まで年金をもらいながら働き続ける予定です。
法改正により、減額率が軽減
2022年4月の法改正により、1962年4月2日以降に生まれた人の繰上げ受給にともなう減額率が月0.4%に軽減されたことも理由です。それより前に生まれた人は月0.5%だったため、60歳0ヵ月で5年(60ヵ月)繰り上げた場合の減額率は30%から24%へと軽減されています。
この改正により、繰上げ受給のハードルがいくらか下がったとされ、Aさんもその恩恵を受けることができました。
