何歳になっても悩まされるのが「人間関係」です。例えば、相手に嫌われているかもしれないと思ったときに、相手は変えられないから自分が変わるというのも確かに1つの方法でしょう。しかし、精神科医の保坂隆氏は、それとは別の方法で自分を守るのも一案だといいます。今回は保坂氏の著書『精神科医が教える60歳からの人生を楽しむ忘れる力』(大和書房)から、人間関係で疲弊しないための心の持ちようをご紹介します。
「私だけランチに誘われない」「態度が冷たい気がする」…人間関係で疲弊しないための「極めてシンプルな対処法」【精神科医の助言】
自分の人生に必要でない人からは、さらりと離れる
私たちは、ともすれば皆から好かれたいと考えてしまいます。でも、人間には相性というものがあります。相性が合うかどうか、見た目で判断するべきではないのですが、見た目で自分のテリトリーに入れたくないという人もいます。なんだか嫌われているのかなと思っても、その人は私の人生には関係ない、私にはなにも影響しないと思うことで自分を守り、相手を忘れます。
ある女性が話してくれました。娘さんが小学生のときにPTAの付き合いが大変だったそうです。やはりボス的ママさんがいて気を使ったり、いじめがあったりして巻き込まれてしまいました。
しかし、娘が成人した今、「あれはなんだったのか」と思うそうです。今ではそのときのママ友と付き合いはありません。自分の人生に大きく影響する出来事でもなかったのに、渦中にいるときは怒ったり落ち込んだりしていました。「今思えば、コメディですね」と話してくれました。
私たちは、いろいろな人間関係に巻き込まれますが、相手を「私の人生には関係ない人」として切り捨て忘れることも必要です。「南斗は随(したが)い運(めぐ)れども、北極は移らず」(『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』)という空海の言葉があります。
北極星は動かない星です。昔の人は北極星を探して自分の位置を確かめました。南斗は北極星より南にある星で、季節とともに動いていきます。人の言葉や感情に巻き込まれないで、北極星のように「ぶれない心」をもって自分の人生を歩んでほしいと思います。
保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長