所得が一定基準を下回る公的年金の受給者を対象に、年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」。所得が低い方の生活の支援を図ることを目的としたものであり、年金とは別の福祉的な性格を持つ制度です。受給者の要件や給付金の額など、事例をもとに、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が解説します。
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父の新盆で帰省した40歳娘、実家の変わり果てた姿に唖然…娘がチラシと書類の山から見つけた〈緑色の封筒〉に67歳母がうれし涙を浮かべたワケ【社労士が解説】
給付金はいくらもらえる?
老齢年金生活者支援給付金の額は、月額5,310円(令和6年度)を基準に国民年金保険料の納付実績によって計算されます。例えば、国民年金保険料を40年間(480月)納付した方の給付金は月額5,310円となり、納付した期間が20年間(240月)の方であれば給付金額は月額2,655円となります。
老齢年金生活者支援給付金の平均給付金額は次の通りです。
Aさんの現在の老齢基礎年金額は月6万円程度。老齢年金生活者支援給付金は約4,500円と見込まれます。物価がどんどん上がる中、年間で5万円を超える給付となるのでAさんにはありがたい話です。
給付金を受給するには年金生活者支援給付金請求書を提出しなければなりませんが、遅れて手続きをした場合は翌月分からの支給となるので、Aさんの場合は9月分からの支給となります。
給付金は、原則、年6回に分けて支払われます。老齢年金と同じく偶数月の15日に支給されますが、老齢年金と同じ受取口座に老齢年金とは別に振り込まれます。各支払月に支給されるのは、その前月までの2カ月分です。例えば、10月に支払われる年金生活者支援給付金は、8月分、9月分の2カ月分となります。
Aさんはもう収入が増えることなんて無いと思っていたので、娘が調べてくれた年金生活者支援給付金の概要を聞いてうれしくなりました。と同時に「今年は娘が手続きをしてくれたけど、これからの手続きはどうしよう」と不安が募ってきました。何か書類が届くたび、娘に連絡をするのも気が引けます。
娘は気配を察知したのか、これからのことも説明してくれました。年金生活者支援給付金は恒久的な制度です。2年目以降の手続きは原則不要なので、年収要件などの支給要件を満たしている限り継続して受給できます。1年ごとに前年の所得等に基づいて支給判定が行われますが、Aさんはパートなどをする予定はないので、これからも受給し続けることができるでしょう。
夫を亡くしてから心が晴れない日々を送ってきましたが、思いがけず給付金を受け取れることを知り、うれし涙を浮かべたAさん。次第に前向きな気持ちも湧き上がってきました。きれい好きだった夫が喜んでくれるよう、まずはリビングから片づけていこうと思ったのでした。
角村 俊一
角村FP社労士事務所代表・CFP