質の高いモノ・サービスが、安価で手に入る日本。これはひとえに企業努力の賜物ですが、実はこの裏で苦しんでいる人たちがいるのです。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、クリーニング店オーナー(58歳)への取材でみえた、日本の小規模店舗が直面している“シビアな現実”を紹介します。
3万円のご祝儀がキツい。夫婦でクリーニング店を営む58歳男性、午後4時半で店番交代→自転車で15分かけてパート仕事へ…“安いニッポン”の裏で苦しむ「小規模店」の実態【ルポ】
交通費にお金を割けないほどカツカツの収入
現実に生活レベルは15年ぐらい前と比べるとかなり縮小している。
「外でご飯を食べるなんてしなくなった。たまに行くのは日高屋とかガストみたいな低価格帯の店だけです」
年齢的に病気が心配で以前は奥さんともども2年に1度は日帰りの人間ドックを受けていたが、この5年近くは行政が住民サービスで実施している各種健診だけ。
パート仕事での収入は約11万円。これに奥さんの収入が約9万円で合計すると20万円にはなる。だけど生活は相変わらず苦しい。
「20万円のうち借金の返済で半分近く出ていっちゃうから」
借金というのは信用組合から借りた店舗兼住まいのリフォームローンと行政から設備費、運転資金として借りた小規模事業者特別融資のこと。2つ合計の返済額が毎月9万7,000円ほどある。
「もう8割方返済しているけど、合計するとまだ150万円近い債務が残っています」
妻のお兄さんと自分の従兄が連帯保証人になっているので、もし返せなかったら迷惑が及ぶ。何が何でもきっちり返さなければならないのだ。
「10万円ちょっと残っても税金や社会保険料も払わなきゃならないでしょ、ざっとですが収入の25%を持っていかれる」
借金を返して10万円ぐらい残るが、諸々の支払いをすると手元に残るのは6万円と少し。生活費の足しにできるのはこれだけだ。