※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
機器のコンパクト化で広がる寿司の世界
まずは、和食を語る上で絶対に欠かせない「寿司」を生み出す製造機器の話からはじめていきましょう。鈴茂器工(本社:東京都中野区、以降スズモ)は1981年に寿司のシャリ玉を作る機器「寿司ロボット1号機」を開発して以降、寿司ロボットのシェアナンバーワンを走り続けるパイオニア的存在。現在は世界80カ国以上に進出、国内では大手回転寿司チェーンの8割強がスズモの寿司ロボットを導入しています。
そして今年7月に登場したのが、「コンパクトシャリ玉ロボットS-Cube(エスキューブ)」。軽量かつコンパクト化を実現した設計により、様々な調理器具や食材が置かれるキッチン・厨房の中の小さなスペースでも設置ができることが最大の魅力。導入先の国はもちろんのこと、飲食店の業態問わずにプロ級のシャリ玉を作ることが可能になります。
スズモの寿司ロボットが圧倒的に評価されている理由は、作り出されるシャリ玉のクオリティにあります。口の中でほぐれる、絶妙にふんわりとした食感は機械が作ったものとは思えない、感動をともなうおいしさを生み出すのが、スズモならではの“米粒を傷めない”技術とアナログ的なノウハウの組み合わせによるもの。
S-Cubeのこだわりは、にぎりの硬さや密度を数値化し、炊かれたごはんの特性をふまえたパーツ素材を組み合わせるという、独自の技術を採用している点にあります。成型、計量すべてにおいて最高の状態を作り出すためには、緻密なデジタル技術だけでは実現しないそうで、熟練職人が持つ、お米を良い状態のまま扱うためのノウハウを機器の素材や動き方で再現することが重要になると言います。詳細は企業秘密とのことですが、シャリ玉は12g~20gまで1g単位で大きさと固さの調整ができ、1台で握り寿司から軍艦巻きなど、用途にあわせてシャリ玉の大きさを調整できます。
スズモではこれらの製造技術を寿司ロボットだけでなく、丼物やカレー、おにぎりを作ることができる「ご飯盛り付けロボット」にも活用しています。1台で多メニューを安定的に作れること、操作性の向上、コンパクトさの実現により、日本の米食文化が世界にますます広がっていくことが予想されます。