厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、過半数以上の父親が養育費を一度も支払ったことがありません。また、養育費の取り決めに関しても、過半数以上の夫婦は取り決めをしていないことがわかります。しかし、取り決めをしていたり、養育費を支払っている関係でも深刻なトラブルが発生しているようです。本記事では牧島慎之介さん(仮名)の事例とともに、行政書士の露木幸彦氏が離婚後の養育費支払いの実態について解説します。
離れて暮らす高校生の娘「パパとディズニーに行きたい!」に強烈な違和感…養育費・月12万円を支払ってきた、役職定年で収入半減・年収500万円の56歳父、元妻の目論見に撃沈【行政書士が解説】
離れて暮らす娘からの「ディズニーデートのお誘い」に胸躍らすも…
<家族構成と登場人物の属性(すべて仮名、年齢は現在)>
夫:牧島慎之介(仮名/56歳会社員、年収500万円) ※今回の相談者
妻:牧島加奈 (仮名/50歳パートタイマー)
子:牧島里奈 (仮名/18歳)
昨年末、慎之介さんは「娘がパパと一緒にディズニーに行きたがっていると元妻からLINEが届いたんです!」と心躍らせました。慎之介さんが元妻と離婚したのは7年前。当時11歳だった娘さんは元妻が引き取ったのですが、いままで娘さんとは食事、買い物、映画以外で会ったことがありませんでした。
高校生の娘さんが友達でも母親でもなく、わざわざ離婚した父親とディズニーに行きたいなんて……筆者は首をかしげましたが、慎之介さんは当日、特に問題なく娘さんと久々の再会。なにもおかしいと疑わず、クリスマスパレードなどを楽しんだのですが、やはりタダではありませんでした。
娘さんは12月中旬、推薦で大学に合格しており、別れ際に「大学に受かったから入学金を払って欲しい」と言い添えたのです。つまり、大学の費用をスムーズに払ってもらうためのテクニックだったことが明らかになりました。後日、元妻から請求が届いたのですが、入学金、1年時の授業料、施設使用料などの合計は160万円。
もちろん、慎之介さんがこの額を難なく払えるのなら、元妻の魂胆に腹を立てることはありません。しかし、慎之介さんは現在56歳。これまで勤めてあげてきた事業部長の座を退き、現在は一兵卒の営業職です。役職定年により年収は900万円から500万円へほぼ半減。
離婚時に決めたのは毎月12万円の養育費を就職するまで、そして高校、大学にかかる費用の10割負担です。高校の学費として3年間で250万円を用意できたのは当時の年収が900万円だったからです。ところが、離婚から7年間、ほとんど貯金をできず生活に余裕がないなか、突然振ってきた大学の学費請求。
慎之介さんは「いまの稼ぎじゃ毎月の養育費で精いっぱいですよ。大学の学費まで手が回りません」とため息をつきます。さらに「僕には僕の人生があります。いま、持っている水上バイクだけは死守したいんです!」と続けます。
そこで慎之介さんは「悪い。学費を用意できない。わかってくれ!」と頼み込んだのですが、元妻には相手にされず。
「だまされた! あんたが学費を払うって言うから渋々、離婚届に判を押したのに」と突き放したうえで「学費を払ってくれないんなら離婚してあげなかったんだからね……もう、どうしてくれるのよ!」と畳みかけてきたのです。
確かに「毎月12万円の養育費と学費をすべて払うから、その代わり離婚して欲しい」と頼んだのは慎之介さんのほうです。
元妻は慎之介さんが学費を丸抱えしてくれる前提で大学を受験させたでしょうから、離婚時の目論見が慎之介さんのせいで狂ったのは確かです。では一度、決めた養育費等はなにがあろうと変更できないのでしょうか?