2020年の民間給与実態統計調査によると、年収300万円以下の人は1,978万人と全体の37.7%。「一億総中流社会」といわれた日本はもはや過去の話、現代の日本は急速に貧困化が進んでいます。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、33歳非正規社員の“生の声”をみていきましょう。
最高の贅沢は「税込み1,000円以内」のサイゼリヤ…月収17万円、33歳非正規女性の悲鳴【ルポ】
交通事故に遭い、派遣打ち切り…“踏んだり蹴ったり”の人生
2年6ヵ月経った頃に電機メーカーの研究所に移され1年9ヵ月ほど働いたが、交通事故に遭って左足首を骨折する不運に見舞われた。
「全治2ヵ月という診断でした。これで派遣打ち切りです」
治療費は相手の自動車保険で賄われたし、失職して得られなかった収入も補償してもらえたが、痛い思いをする、失業するで踏んだり蹴ったりだった。
「完治後に就職活動したのですがやはり上手くいかず、また派遣会社に連絡を取り、何とか派遣先をあてがってもらったんです」
アルバイトよりは高額な時給設定も、年収は300万円が限度
紹介された派遣先は生命保険会社。やはり担当業務は事務処理全般。「時給は派遣1年目が1,460円でした。ずっとこの金額だったのですが人手不足と言われるようになってから小刻みに上がり、最高は1,520円でした」
時給設定は絶妙でとびきり良くはないが、一般的なアルバイトよりはかなり高額。時間外手当は5時間分までは出してくれたので月収は24、5万円は確保できる。
「だけど年収は300万円が限度です。手当はないし賞与もない。休みが多いとノーワークノーペイなので仕方ありません」
やはり直接雇用の方がいい、正社員の方が絶対に得だと感じ、派遣社員をやりながら改めて就職活動をしてみたが結果が伴わない。
「現実には年齢制限がありますから。30歳近くなると採用対象にならない感じでした。こういうわけで派遣から脱却できませんでした」
コロナの影響で2度目の雇い止めに
新型コロナが流行り始めた頃は、大手自動車会社の関連会社に派遣されていたのだが、突然雇い止めにされた。
「派遣会社のコーディネーターが言うには、クライアントさんの事情ということだけでした。1ヵ月後ぐらいに新聞に自動車会社本体に関する記事が載っていて、本社のスリム化、効率化を急ぐと書いてあった。
おそらくですが本社の人数を削るために関連会社や子会社に異動させる、だから派遣には出ていってもらう。そういうことだと思いました」
トコロテン式に下の人間が切られた。そういうことだが身分は派遣会社の登録スタッフなのだから文句も言えない。
失職したのは20年8月半ば。お盆休み前が最後の出勤だった。
「派遣会社からは次の派遣先を探すのには時間がかかると言われて。失業手当を受けながら自分でも次の働き口を探したのですが思うようにいかず……。失業手当が終了してからは短時間のアルバイトを組み合わせてどうにか暮らしています」