人間の設計図のような役割を担う「遺伝子」。遺伝はどの程度人間の能力に影響を与えるのでしょうか。本記事では、日本における双生児法研究の第一人者、安藤寿康氏の著書『教育は遺伝に勝てるか?』(朝日新聞出版)から一部抜粋・編集して、遺伝と人生がどこまで関連付けられるかについて、データに基づき解説します。
「遺伝子神話」に取り込まれず、人生を謳歌して
にもかかわらず、遺伝子検査の結果を見ると、そちらの方が信用できるように思えてしまうのだとしたら、あなたはいわば「遺伝子神話」に取り込まれています。遺伝子によって説明されてしまうと、それはもう動かしようのない科学的な事実であるかのように錯覚してしまい、あたかも万能のご神託のように感じてしまうのです。
もし遺伝子検査の結果があなたがすでに抱いていた予測を後押ししてくれるようなら、その結果に少し確信度を増すのに利用すればいいでしょう。
もし望まない結果だったとしても、それでも自分が目指したい夢があるのだとしたら、そんな夢を抱いた時点で遺伝子検査で調べられていない何か別の遺伝的素質がその夢を抱くことにかかわっているのですから、その夢を追い求めてみてもよいのです。
遺伝子検査の結果に逆らって自分の夢を実現した名作『ガタカ※』の主人公のように。
※ 遺伝子検査とゲノム編集によって「遺伝的に適正」な子どもを産むのが当たり前になった近未来で、「自然」に生まれ、遺伝的欠点をたくさん宣告されながら夢を追い求める人間の生きざまを描いた映画。1997年製作と少し古い作品だが、いまだ色あせない秀作で評価も高い。アンドリュー・ニコル監督、イーサン・ホーク主演。
安藤 寿康
慶應義塾大学名誉教授・教育学博士