意外な盲点「脂質管理」をきちんとしよう

・腎臓にダメージをきたす「脂質異常」は避けるべき

生活習慣病において、高血圧や糖尿病に注目する人は多いのですが、「脂質」に注目する人は少なく、あまり光が当たっていない印象があります。でも、わたしは糖尿病、高血圧、脂質異常が生活習慣病の3本柱であると考えています。脂質異常のリスクも頭に入れておくべきです。


三大栄養素である糖質、蛋白質、脂質は、腎臓病と深い関わりがあります。まず、腎臓病を引き起こす原因疾患として一番多い糖尿病では、血糖管理が重要なことはよく知られていますね。また、すでにお話しした通り、腎臓には蛋白質管理も非常に大切です。そして、血液の4分の1が流れている腎臓は「血管のかたまり」とも言えるため、腎臓と血管の状態をよくすることは、イコールです。


血管を丈夫にするために重要なのは、血糖管理、血圧管理、脂質管理であり、血管にダメージをきたす脂質異常も避けるべきなのです。

・LDL(悪玉)コレステロールによって、動脈が詰まってしまう

脂質異常は、LDL(悪玉)コレステロールが高い場合とHDL(善玉)コレステロールが低い場合、中性脂肪が高い場合の3つに分かれます。そして、脂質異常のうち、動脈硬化をきたす最大の原因と言われているLDLコレステロールをきちんとコントロールする食事や薬物治療は、非常に大切です。とくに、腎臓の悪い人やすでに脳梗塞・心臓病といった動脈硬化の症状が出ている人は、しっかりと脂質を下げなければいけません。


一般的にLDLコレステロールが増えやすい食事は、脂質の多いものです。なかでも、加工食品を使った食事には注意が必要です。また、肉は火を通すときに酸化してしまうことに気をつけ、油を使い回すような揚げ物も身体に悪いので、避けるべきでしょう。


ところで、なぜLDLコレステロールが増えるとよくないのでしょうか? それは、血液中にLDLコレステロールが増えすぎた状態が続くと、活性酸素の影響を受けて「変性LDL」という物質になり、血管を傷つけてしまうからです。傷ついた血管には、そのすき間からLDLコレステロールが入り込み、酸化して溜まっていきます。


わたしたちの身体には、こうした異物を排除しようとする「掃除屋(マクロファージ)」が存在し、異物を取り込んだマクロファージは、サイトカインという物質を出して炎症反応を起こします。炎症反応の結果、動脈に膨らみ(プラーク)をつくるのですが、プラークはニキビのように破れてしまうことがあります。そのとき、血液のかたまり(血栓)ができてしまうと、動脈が完全に詰まる原因となるのです。


これが冠動脈で起こると狭心症や心筋梗塞となり、脳動脈で起こると脳梗塞となり、命に関わることに…。このように、LDLコレステロールが増えると、さまざまな病気を併発するリスクが増えてしまうため、脂質管理の努力はとても大切と言えるでしょう。


なお、最近はコレステロールに関する考え方が諸説出ていて、厚生労働省も2015年、コレステロールの上限の目標量を撤廃しました。これは医者のなかでも賛否が分かれているところであり、動脈硬化を発症している人はコレステロールを下げたほうがいい、という考えの医者がいまでも多いことはたしかです。
 

別府浩毅

医師