日本の住宅の間取りは、狭い空間を無駄なく効率的に使えるよう工夫されてきました。しかし、一級建築士で模様替えアドバイザーのしかまのりこ氏によると、この住み慣れた日本の住宅に対する「固定観念・思い込み」によって、実は快適な暮らしが遠のいている可能性があるというのです。はたしてその「思い込み」の正体とは? 『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)より詳しくみていきましょう。
ダイニングの隣はキッチン…間取りへの“思い込み”の「根本原因」
いまでこそ当たり前の「LDK」…始まりは団地の「2DK」から
日本の住宅の間取りは、狭い空間が効率的にレイアウトされており、無駄がなく機能的にできています。その最たるものがLDKです。今でこそ2LDKや3LDKなど、様々な間取りがありますが、その始まりは団地における2DKでした。
2DKとは、寝室(洋室)2つに、DKがついたものを表します。DKは、食事空間であるD(食事室またはダイニング)とK(台所またはキッチン)のことで、当初はL(居間またはリビング)という考え方や、その空間はありませんでした。
また、食事室であるダイニングは、「台所を広くすれば、同じ空間で食事もできる」という台所空間の拡張から生まれたもので、単独で作られたものではありません。
こうした経緯もあり、ダイニングは、キッチンの隣にあるのが当たり前という常識や思い込みが、私たちには強いのです。
快適な暮らしのためには、“思い込み”はいったんリセット
キッチンの隣にダイニングがある間取りは、料理の配膳や、片付けを考えると、とても機能的で便利です。しかし、どの様な場合にも、キッチンの隣にダイニングを置いた方が良いかというと、そうとも限りません。
例えば、リビング空間が狭く、ダイニング空間が広い場合。家族の人数にもよりますが、基本的には、ダイニングテーブルやダイニングチェアなどのダイニング家具よりも、ソファやリビングテーブルなどのリビング家具の方が、広いスペースを必要とします。リビング空間が狭ければ、リビング家具を置くことにより、さらにリビングは狭くなってしまいます。
そこで、ダイニング空間が広く、リビング空間が狭い場合は、「キッチンの隣は、必ずダイニング」という、間取りへの思い込みを一度リセットし、狭いリビング空間と広いダイニング空間を入れ替えてみましょう。そうすることで、空間の広さに見合った、無理のない家具レイアウトができるようになります。
このように、固定観念や思い込みにしばられず、家の間取りをフレキシブルに考えることができれば、スマートな家具レイアウトが可能になります。
では、リビング空間とダイニング空間を入れ替えると、どのような部屋になるのでしょうか? 実際のプランで確認してみましょう。