相続した不動産を売却する場合、相続時の相続税と売却時の所得税の支払を課せられ、大変です。そのため、支払った相続税を譲渡所得から差し引き、所得税負担を軽くする特例が用意されています。これを適用すれば所得税の節税が可能です。活用の注意点を中心に見ていきましょう。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
所有者が老人ホームに入っていた場合は?
特例を適用するための要件として「相続開始の直前に被相続人が住んでいた住居であること」と上述しましたが、場合によっては、被相続人の方が亡くなる直前は自宅ではなく老人ホームに入っていた、ということもあるでしょう。このようなケースでの特例の適用はどうなるのでしょうか?
ひとり暮らしの老人が老人ホームなどに入所し、相続が発生する前に自宅が空き家となり、そのまま亡くなった場合でも、次の4つの要件に当てはまる場合、特例を適用することができます。
①亡くなった人が要介護認定や要支援認定などを受けており、相続開始の直前まで、老人ホーム・介護医療施設・サービス付き高齢者向け住宅などに入所していた
②亡くなった方が老人ホーム等に入所したときから相続開始の直前まで、その家屋が亡くなった方が持っている家財や物品の保管場所として使用されていた
③相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかった
④相続時から売却時までずっと空き家だった
注意!「取得費加算の特例」とは併用できない
ここで注意が必要なのが、先ほども触れた、「取得費加算の特例」と併用できないという問題です。どちらを使う方が有利になるか、必ず比較検討して判断するようにしてください。
いずれも譲渡所得から差し引く計算を行いますが、「3,000万円特別控除の特例」であれば3,000万円を差し引くことになり、「取得費加算の特例」であれば、売った財産にかかる相続税額を差し引くことになります。
つまり、売った財産にかかる相続税額が3,000万円を超える場合は、取得費加算の特例を適用したほうが有利になり、それ対して、3,000万円未満の場合は、3,000万円特別控除を適用したほうが有利になるということです。
ご自身のケースで計算し、オトクな方を選びましょう。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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