歴史をうごかしたおかゆ

しかし、ブッダは、革命的なことを考えついてしまう。

たった6年だけど、めちゃくちゃ本気で苦行してきた。でも、なんか手応えがない。

「これ、もしかして意味ないんじゃね…?」

もっと他に方法あるやろ、とおもったのだ。

しかし、方向転換するにしても、断食しすぎて体力も気力もゼロである。客観的に見て、死にかけの中年男性である。

ここでブッダが力つきていたら、仏教はうまれなかった。

しかし、ブッダは「持っていた」のだ。奇跡的に、人類の歴史の転換点をつくる人物があらわれる。

「あのイケメン死にそうじゃね?」

と心配した近所のギャルが、おかゆをもってきてくれたのだ。

ギャルはすごい。ふつうの人は「断食してる人に、ごはんあげるとか失礼だよね」って遠慮すると思う。ダイエット中の人にケーキあげないのと一緒だ。

ここで、ブッダに究極の二択にせまられた。

――おかゆを食うか、食わないか。

思い出してほしい。ブッダは、妻と生まれたての子供を捨てて、苦行にうちこんできた。

ここで、おかゆを、しかもギャルのおかゆなんて食ってしまったら、今までの努力が無意味になるやんか。

元妻からしても「は? なめてんのか?」な事案である。

自分探しプロの同業者からも「あいつ、終わったな」とおもわれること必至。

しかし、ブッダはここで、のちに人類の歴史にのこる、重大な選択をした。

「おれ、おかゆ、食う。」

おかゆを食うことでみえるかもしれない、新しい景色に賭けたのだ。

ズズズッ(食べる音)

あぁ…うまい…(感想)

うまいよね…(ギャルの感想)

ギャルの慈悲がつまったおかゆは、沁みた。

ブッダの体力と気力がモリモリ回復した。過去最高のコンディションである。

そのままの勢いで、食後、おっきい木の下で瞑想したら、

悟りを開いてしまった。

そんなことある? ちなみにこのギャルは「スジャータ」という。コーンスープとかでおなじみの日本の食品メーカーの名前の由来になっている。