親世代の年金受給額を知ると、「自分たちはたったこれだけしかもらえないのか」と不満に感じる人も多いでしょう。特に、高所得な人ほど、現役時代の収入と年金額の差に落胆してしまいます。では、60歳を目前にして年金受給額を増やすことは可能なのでしょうか? 株式会社よこはまライフプランニング代表取締役でCFPの井内義典氏が解説します。
うそだろ…ねんきん定期便に記載された“少なすぎる”年金見込額
ねんきん定期便を確認したAさんは、記載されている年金見込額を見て愕然としました。Aさんの年金見込額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせて年間230万円、月20万円足らずだったのです。
「うそだろ……うちの親父はかなり年金もらってたのに、俺はたったこれだけ!? 保険料はしっかり払ってきたはずだし、なにかの間違いではないのか?」とAさんは首をかしげます。
年金だけで暮らすのは難しいというのはなんとなく聞いていたことから覚悟していたものの、「本当にこれだけしか受け取れないのか」「もう少し年金が増やせないものか」と気になり、ファイナンシャルプランナーに相談することにしました。
「ねんきん定期便」の数字がすべてではない
Aさんは会社員のため、老齢年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方を65歳から終身で受給することができます。
先述の「ねんきん定期便」には将来の年金の見込額が表示され、自分がもらえるおおよその年金額が把握できます。
しかし、ここで注意したいのは、ねんきん定期便に記載された金額=確定した金額ではないということです。
Aさんが確認したねんきん定期便に書かれている見込額は、60歳までいまの条件で勤務し続けた場合の見込額となり、60歳以降の年金加入記録分については含まれていません。
つまり、Aさんが60歳以降に給与の減額を受け入れて関連会社で勤務を続ければ、年金額を増やすことができるのです。では、60歳以降も関連会社で勤務した場合、受給できる年金額はいくらになるのでしょうか。
Aさんが60歳以降も働いた場合の年金見込額
Aさんの60歳以降の年収は550万円ですが、月給に直すと46万円程度です。
標準報酬月額47万円を基準に計算した場合、老齢厚生年金の報酬比例部分が年間14万円以上増え、また、経過的加算額が5万4,000円程度増えますので、約20万円増えます。
つまり、年間230万円から250万円となり、増えた額が65歳から生涯続くことになります。
一方、60歳でリタイアした場合、当然この20万円はありません。ねんきん定期便どおり、年間230万円が生涯続くことになるでしょう。