60代の会社員は、退職するタイミングによってもらえるお金に差があることをご存じでしょうか。役職定年後、関連会社で働くAさん64歳の事例をもとに、「失業保険」と「高年齢求職者給付金」の特徴と違いについて、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
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Aさんが受け取ることのできる失業保険額
失業保険は、「賃金日額」に基づき「基本手当日額」を算出して、離職者の該当する給付日数分が支給されます。
Aさんの現在の月収は約31万6,000円ですので、「基本手当の所定給付日数※」などを参考にすると、「賃金日額」は1万0,533円、「基本手当日額」は5,046円となります。また、Aさんの雇用保険加入期間は20年以上ですので、失業保険の給付を150日分受け取ることができます。
※ ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
よって、
Aさんの失業保険支給額は、75万6,900円です。
失業保険の注意点…退職直後は「無収入」に
実際に失業保険を受け取るには、ハローワークに離職票を提出し、求職の申し込みをする必要があります。すると、7日間の待機期間ののち、その後4週に1度の認定日ごとにハローワークで失業確認を受け、その都度失業保険が支給されます。
さらに、Aさんの場合は定年ではなく「自己都合退職」となるため、さらに2ヵ月間の「給付制限」(支給が受けられない期間)が加わります。
つまり150日分受け取るには、7~8ヵ月かかるということです。
その分、65歳以降に所定日数分の失業保険と、再就職の状況しだいでは給与以外に再就職手当※1や就業促進定着手当※2が受給できます。これは、老齢厚生年金や老齢基礎年金と併給可能です。
この失業給付を受け取るために64歳11ヵ月までに退職したら、当然給与は支給されなくなるほか、65歳までの「特別支給の老齢厚生年金」は停止となります。そのため、退職直後は無収入になります。
このほか、65歳以降に受け取れる老齢年金についても、原則誕生月以降の偶数月に2ヵ月分ずつ支給されることから、退職後から収入が入るまでのあいだ、あらかじめ生活費を確保しておくことが重要です。
※1 再就職手当とは、失業保険を受給中に、一定の要件に該当して早期に就職できたときに、一時金で支給される手当。パート・アルバイトや起業でも条件を満たせば受給可能。詳細は、厚生労働省他「再就職手当のご案内」を参照のこと。
※2 就業促進定着手当とは、再就職手当の支給を受けて、再就職先に6ヵ月以上雇用され、再就職先での6ヵ月間の賃金が離職前の賃金より低い場合に、基本手当(失業保険)の支給残日額の40%または30%を上限に、低下した賃金6ヵ月分が支給される制度。