Aさんが受け取ることのできる失業保険額

失業保険は、「賃金日額」に基づき「基本手当日額」を算出して、離職者の該当する給付日数分が支給されます。

Aさんの現在の月収は約31万6,000円ですので、「基本手当の所定給付日数」などを参考にすると、「賃金日額」は1万0,533円、「基本手当日額」は5,046円となります。また、Aさんの雇用保険加入期間は20年以上ですので、失業保険の給付を150日分受け取ることができます。

※ ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」

よって、

5,046円(基本手当日額)×150日(失業保険の給付日数)=75万6,900円

Aさんの失業保険支給額は、75万6,900円です。

失業保険の注意点…退職直後は「無収入」に

実際に失業保険を受け取るには、ハローワークに離職票を提出し、求職の申し込みをする必要があります。すると、7日間の待機期間ののち、その後4週に1度の認定日ごとにハローワークで失業確認を受け、その都度失業保険が支給されます。

さらに、Aさんの場合は定年ではなく「自己都合退職」となるため、さらに2ヵ月間の「給付制限」(支給が受けられない期間)が加わります。

つまり150日分受け取るには、7~8ヵ月かかるということです。

その分、65歳以降に所定日数分の失業保険と、再就職の状況しだいでは給与以外に再就職手当※1や就業促進定着手当※2が受給できます。これは、老齢厚生年金や老齢基礎年金と併給可能です。

この失業給付を受け取るために64歳11ヵ月までに退職したら、当然給与は支給されなくなるほか、65歳までの「特別支給の老齢厚生年金」は停止となります。そのため、退職直後は無収入になります。

このほか、65歳以降に受け取れる老齢年金についても、原則誕生月以降の偶数月に2ヵ月分ずつ支給されることから、退職後から収入が入るまでのあいだ、あらかじめ生活費を確保しておくことが重要です。

※1 再就職手当とは、失業保険を受給中に、一定の要件に該当して早期に就職できたときに、一時金で支給される手当。パート・アルバイトや起業でも条件を満たせば受給可能。詳細は、厚生労働省他「再就職手当のご案内」を参照のこと。

※2 就業促進定着手当とは、再就職手当の支給を受けて、再就職先に6ヵ月以上雇用され、再就職先での6ヵ月間の賃金が離職前の賃金より低い場合に、基本手当(失業保険)の支給残日額の40%または30%を上限に、低下した賃金6ヵ月分が支給される制度。