スーパーマーケットやレストランで購入できるお惣菜。お手頃な価格で、冷めてもおいしい商品が増えていると思いませんか? 実はそれらを支えるのが、テクノロジーとAI。総菜作りの舞台裏では目まぐるしい進化が起こっています。しかもそれはおいしさを叶えるだけではなく、人手不足やフードロスを解決するような画期的な取り組みがすでに導入されているのです。そこで今回は、「お惣菜×テクノロジー」をテーマに、画期的な事例を3つご紹介していきたいと思います。
スーパー・レストランの総菜作りはロボット活躍の時代へ フードテック躍進の舞台裏

イオンリテールがAIを活用した値引きシステムを導入

AIカカク利用シーンのイメージ。AIがその日その時に適切な値引き率を提示。総菜部門での成功により2024年5月には鮮魚部門や畜産部門にも拡大している。
AIカカク利用シーンのイメージ。AIがその日その時に適切な値引き率を提示。総菜部門での成功により2024年5月には鮮魚部門や畜産部門にも拡大している。

 

最後は、総菜の「価格」をAI活用により最適化する「イオンリテール株式会社」(千葉県千葉市)の事例です。同社は総合スーパーマーケット界において売上高1位に君臨する大企業で、2023度の業績改善の要因として積極的なAI活用が指摘されるほど。2021年から総菜部門において値引き支援システム「AIカカク」の導入をはじめました。

 

AIカカクとは、販売実績や天候・客数などの環境条件を学習したAIが“その日その時”の需要を予測し、バーコードで読み取った商品情報と陳列数をもとに適切な割引率を提示するシステムのこと。商品のバーコードを読み取って陳列数を入力するだけで、適切な割引率のシールが自動印刷され、従業員はシールを添付すれば作業が完了します。

 

データに裏付けされた価格で販売することで、導入前に比べロス率が1割以上低減され、さらには値引きや売り切り業務に関する社員の教育時間の低減にも成功。これにより適用部門が他にも広がり、2022年に日配品一部、2024年5月から畜産、水産部門へ拡大されることになりました。

 

忙しい時の救世主にもなる外食・スーパーでのお惣菜が、ますます美味しく、製造・販売現場でも最適化される流れは、食品業界における様々な課題を解決してくれるでしょう。さらなる浸透に注目したいところです。

 

<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。