いつまでも健康な脳でいたいですよね。それなら、睡眠も見直しましょう。脳神経内科医の米山公啓氏の著書『医師が教える元気脳の作り方』によると、脳の健康と睡眠は大いに関係しているそうです。本書からその理由を紹介します。
睡眠中、脳はどうなっている
睡眠というのは脳を休ませる時間だと思ってしまいますが、実は脳は休んでいるときもありますが、脳を活性化させたり、記憶の整理をしたり、非常に重要な時間なのです。いい睡眠、深い睡眠をとりましょうというのは、睡眠と脳の関係を無視した、勝手な思惑というものです。
ヒトの睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠の二つがあります。
レム睡眠は“Rapid Eye Movement”(眠っているときに眼球が素早く動くこと、REM)からレム睡眠と呼ばれています。典型的な睡眠パターンは寝てすぐに90分ほど深いノンレム睡眠が続き、その後約90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返し出現します。
レム睡眠は睡眠の後半から起床前にかけて増え、この時間帯は心身ともに起きる準備状態となります。ノンレム睡眠では大脳皮質を集中的に休ませます。筋肉はそれほど緩んでいません。レム睡眠では主にからだを休めており、筋肉が弛緩しています。
夢を見るのは主にレム睡眠中です。またレム睡眠中は自律神経系が交感神経優位となり、血圧や脈拍が変動しやすい状態となります。京都大学が行った、マウスの脳内の微小環境を直接観察した研究によれば、レム睡眠中に、大脳皮質の毛細血管へ赤血球がたくさん流れ込んでいることがわかりました。
つまりレム睡眠中には大脳皮質で活発に物質交換が行われ、脳がリフレッシュされていると考えられるのです。レム睡眠が不足すると、大脳皮質での活発な物質交換がうまくできなくなって、これが認知症の発症に関係しているのかもしれないのです。
睡眠中に脳は記憶の定着を行っています。つまり忘れない記憶に変化させているのです。前日起きたことで重要なことを忘れない記憶に変換しています。だから眠らないと記憶力が落ちたように思えるわけです。徹夜で試験会場に臨むより、ある程度勉強して寝てしまったほうが、試験のときに憶えていることは多くなるわけです。
認知症の初期の症状に不眠がありますが、これは睡眠が足りなくなって、脳にダメージを与えている結果なのかもしれません。普段からよい睡眠をとることで、脳を守っていく必要があります。