よく観察すると見えてくる、心を開くキー・ポイント

私たちは、コミュニケーションを“自分本位”に捉えがちです。

「言ったじゃないか!」「そんなことは聞いてないよ!」という言葉が象徴しています。いかがでしょうか。あなたもよく使う言葉ではないですか?

「言ったじゃないか!」という言葉の意味を補足すると、「自分の言ったことは絶対に相手が聞いていて、理解納得するべきだ」とでも言いたいのでしょう。これではまったくの“自分本位”です。

「そんなことは聞いてないよ!」という言葉で、「自分が聞いていないんだから、責任なんてない。どうせ君が言ったつもりでいるだけで、言い忘れたのだろう」と伝えたいのでしょう。これもやはり“自分本位”です。

このように、“自分本位”の人たちのコミュニケーションは不安定で、人間関係のトラブルを起こしやすいものです。

コミュニケーションは、“相手本位”でなければ気持ちの良い人間関係を築くことはできないでしょう。

「言ったじゃないか!」と相手のせいにして、責任をなすりつけるのではなく、「自分の言ったことを、彼が(彼女が)理解できたか」という視点が必要です。

「そんなこと聞いてないよ!」と、責任逃れするのではなく、「彼が(彼女が)言ったことを、うわの空で聞けていなかったのかもしれない」という視点です。「では、もう一度聞かせてください」と言えばいいのです。

コミュニケーションの意識を、“自分本位”から、“相手本位”に切り替えると、「丁寧に伝え」「慎重に聞き」「確認を取る」ことになり、関係が大きく改善されます。

しかも、相手を観察する機会が大幅に増えます。今までは見えなかった、相手の心を開く「キー・ポイント」が見えてくるようになります。

“相手本位”という意識ですから、「いつ話しかけると、一番集中して聞いてくれるか」「どのような表情やしぐさで聞けば、相手が話しやすいか」「どんなことを言われたら嫌がるのか」「どんなことを言われたら喜ぶのか」ということもわかるようになってきます。

“KY(空気が読めない)”という言葉があります。そう呼ばれる人たちは、つまり「自分本位で、他者や状況を観察していない」ということでしょう。その意味で見渡すと、本当に“KY”だらけです。私も、あなたも、そうならないようにせいぜい注意しましょう。

“相手本位”の目で見て、よく観察していくと、不思議なことに、呼吸の速さ(リズム)が同調してきます。そして次に、話す速度、声のトーン、姿勢、仕草なども同調してきます。

これらは、心理カウンセラーがカウンセリングで意識的に使う「ペーシング」という手法です。人間は「同じもの、似たものに安心感を持ち、心を開く」という性質を持っています。短い時間で、安心感と信頼感をつくるにはたいへん効果的な手法です。

“相手本位”の目で、相手や周囲を見てみると、違う世界が見えてくるかもしれません。そして「苦手な相手」の心を開くキー・ポイントも見えてくるはずです。

出所:『「嫌いな人」のトリセツ 人付き合いがラクになる37の習慣』(総合法令出版)より抜粋
相手本位で観察し、心のキーポイントを探す 出所:『「嫌いな人」のトリセツ 人付き合いがラクになる37の習慣』(総合法令出版)より抜粋

林 恭弘
ビジネス心理コンサルティング株式会社
代表取締役