好きな人としか付き合わない……そんな生き方ができれば最高ですが、ほとんどの人は“嫌いな人・苦手な人”とも付き合っていかなければなりません。そこで、そのような相手と接する際、落ち込みやイラ立ちといった負の感情から自分自身を守る方法をみていきましょう。『「嫌いな人」のトリセツ 人付き合いがラクになる37の習慣』(総合法令出版)の著者で心理コンサルタントの林恭弘氏が解説します。
「君のため」と言いつつ完全に八つ当たり…周りにいる“イヤな奴”から身を守る「賢い返答」【心理コンサルタントが解説】
よく観察すると見えてくる、心を開くキー・ポイント
私たちは、コミュニケーションを“自分本位”に捉えがちです。
「言ったじゃないか!」「そんなことは聞いてないよ!」という言葉が象徴しています。いかがでしょうか。あなたもよく使う言葉ではないですか?
「言ったじゃないか!」という言葉の意味を補足すると、「自分の言ったことは絶対に相手が聞いていて、理解納得するべきだ」とでも言いたいのでしょう。これではまったくの“自分本位”です。
「そんなことは聞いてないよ!」という言葉で、「自分が聞いていないんだから、責任なんてない。どうせ君が言ったつもりでいるだけで、言い忘れたのだろう」と伝えたいのでしょう。これもやはり“自分本位”です。
このように、“自分本位”の人たちのコミュニケーションは不安定で、人間関係のトラブルを起こしやすいものです。
コミュニケーションは、“相手本位”でなければ気持ちの良い人間関係を築くことはできないでしょう。
「言ったじゃないか!」と相手のせいにして、責任をなすりつけるのではなく、「自分の言ったことを、彼が(彼女が)理解できたか」という視点が必要です。
「そんなこと聞いてないよ!」と、責任逃れするのではなく、「彼が(彼女が)言ったことを、うわの空で聞けていなかったのかもしれない」という視点です。「では、もう一度聞かせてください」と言えばいいのです。
コミュニケーションの意識を、“自分本位”から、“相手本位”に切り替えると、「丁寧に伝え」「慎重に聞き」「確認を取る」ことになり、関係が大きく改善されます。
しかも、相手を観察する機会が大幅に増えます。今までは見えなかった、相手の心を開く「キー・ポイント」が見えてくるようになります。
“相手本位”という意識ですから、「いつ話しかけると、一番集中して聞いてくれるか」「どのような表情やしぐさで聞けば、相手が話しやすいか」「どんなことを言われたら嫌がるのか」「どんなことを言われたら喜ぶのか」ということもわかるようになってきます。
“KY(空気が読めない)”という言葉があります。そう呼ばれる人たちは、つまり「自分本位で、他者や状況を観察していない」ということでしょう。その意味で見渡すと、本当に“KY”だらけです。私も、あなたも、そうならないようにせいぜい注意しましょう。
“相手本位”の目で見て、よく観察していくと、不思議なことに、呼吸の速さ(リズム)が同調してきます。そして次に、話す速度、声のトーン、姿勢、仕草なども同調してきます。
これらは、心理カウンセラーがカウンセリングで意識的に使う「ペーシング」という手法です。人間は「同じもの、似たものに安心感を持ち、心を開く」という性質を持っています。短い時間で、安心感と信頼感をつくるにはたいへん効果的な手法です。
“相手本位”の目で、相手や周囲を見てみると、違う世界が見えてくるかもしれません。そして「苦手な相手」の心を開くキー・ポイントも見えてくるはずです。
林 恭弘
ビジネス心理コンサルティング株式会社
代表取締役