聴覚は私たちに備わっている重要な感覚のひとつ。人間が受け取る感覚情報のうち、視覚に次ぐ2番目に多い情報量を届けてくれます。視野外の危険を知らせてくれるだけでなく、映像に臨場感を与えてくれたり、音楽で心を癒やしてくれたりと、人生をより豊かにしてくれます。そんな音を発する音響機器が、近年目覚ましい発展を遂げていることをご存じでしょうか。今回は、まるでSFの世界を思わせるような最先端の音響テクノロジーを紹介していきます。
スピーカーを身に纏う!? 「音が鳴る布」のまさかの使い道とは?まるでSF、進化を遂げる音響テクノロジー (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

身に纏える“布型スピーカー”誕生

(※写真はイメージです/PIXTA)
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最初に紹介する技術は、産業技術総合研究所が開発した布型のスピーカー「ファブリックスピーカー」です。まるで近未来SFに出てきそうな代物ですが、布と布のあいだに、薄く柔軟なフィルムと銀メッキ短繊維の伸びる電極を挟むというシンプルな構造でできています。

 

服や寝具の一部として使用することができ、伸び縮みしても音が変わらないのが特徴です。形状が特殊なのはもちろんのこと、その丈夫さも規格外。ハンマーで叩いても壊れず、音が途切れることもありません。

 

将来的にさまざまな活用方法が考えられますが、面白い活用としてはスマートウォッチの体調管理機能との連携。心電図機能や血圧測定機能を持ち、なかには、医療機器としての承認を得ているモデルもあります。

 

実際にどのように活用するかというと、なにか体調に異常が起きたときはスマートウォッチ自体での通知のほか、スマホなどのデバイスに通知が送られるのが一般的です。

 

しかしファブリックスピーカーを搭載した服をスマートウォッチに連携した状態で着用していれば、「普段着用している服から音が出て周囲に異常を伝える」ということも可能になります。現在、ファブリックスピーカーは自動車の警笛レベルの音量も出すことができるため、かなり広い範囲に異常を知らせることもできそうです。

聞きたい音を聞きたい人だけに届ける“オープンイヤー型イヤホン”

(※写真はイメージです/PIXTA)
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続いて紹介するのが、NTTメディアインテリジェンス研究所が開発した「パーソナライズドサウンドゾーン」。同技術では再生される音に逆相の音を当てることで、範囲外に漏れ出る音を打ち消し、特定の範囲内でのみ音が聞こえるようになります。

 

また将来的に目指しているのが、周囲から聞こえてくる不要な音にも同様に逆相の音を当てることで雑音を打ち消し、必要な音だけを透過させる仕組みです。実現すれば、たとえばリモートワーク中に自宅で会議をしているときに、生活音は相手に伝わらず、確認したい音だけは透過させて聞くことができます。

 

NTTソノリティ株式会社はこの技術を使って、2022年に初のコンシューマー音響ブランド「nwm(ヌーム)」を設立しました。nwmはオープンイヤー型のイヤホンのため、通常のイヤホンとは異なり、耳を塞ぐ装着の煩わしさや長時間使用による疲れ、周囲の状況を察知しづらくなるなどのデメリットが少なく、音漏れは最小限に。

 

自分のしたいことをしながら周囲ともシームレスに繋がることができます。