みなさんは代替食品と聞くと、どのようなイメージを持っていますか? アレルギー対応やヴィーガンなど限られた人々に向けた特別な食べ物という印象を抱いている人はまだまだ少なくないでしょう。ところがその状況は大きく変わりつつあり、身体や環境への配慮、食の多様性を実現させる有力な手段として世界的に高い関心が集まっています。日本においても最近では“Plant Based Food(プラントベースフード)”というネーミングをスーパーやカフェでもよく見かけるようになりました。しかもそれらは、大豆ミートや植物性チーズだけではなく、スイーツやハンバーガーといった身近な人気料理にまで浸透してきているようです。そこで今回は、注目される代替食品の最新事例をご紹介しながら、代替食作りにおける技術革新の可能性について考えてみたいと思います。
とんこつラーメンから本格クロワッサンまで登場!代替フードの進化最前線

困難だと言われていたクロワッサンも植物性に

東京・麻布十番にある「Te cor gentil(テコールジャンティ)」のパンはすべて植物性由来の食材で作られている(著者撮影)
東京・麻布十番にある「Te cor gentil(テコールジャンティ)」のパンはすべて植物性由来の食材で作られている(著者撮影)

 

最後は、難しいとされていたクロワッサン。東京・麻布十番にある「Te cor gentil(テコールジャンティ)」は、従来のパンの常識を大きく覆す新発想のヴィーガン専門パン屋として2022年にオープンしました。

 

バターをたっぷりすることで生まれる独特のパリパリ感や風味が魅力のクロワッサンをはじめ、メロンパン、ドーナツなど20種類以上のパンを、ソイやオーツなどの植物性原料のみを使って生み出しています。大人気のクロワッサンの層は繊細なまでに美しく、食べた時にサクッジュワッとする食感は、新しい感動を覚える味わいです。

 

具体的な製法は公開されていないものの、アーモンドバターやココナッツオイルで作られる100%植物バターを使用し、卵の代わりにあるスーパーフードを入れることでふわっとした食感を表現しているそうです。

 

テコールジャンティのような人気ヴィーガンベーカリーが増えている背景には、高品質・高機能な植物性バターやミルクの普及が関係しています。そしてさらに、本当においしい植物性パンを作る秘訣は、職人の経験やテクニックといった、お店が持つアナログ技術も不可欠であることは間違いないでしょう。

今後の進化も楽しみな代替フード業界

さあいかがでしたか? 作れないものはないとさえ思えるほど、代替フード業界はめまぐるしい進化を遂げています。次にやってくる革命的なニュースを楽しみに待つことにいたしましょう!

 

<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。