みなさんは代替食品と聞くと、どのようなイメージを持っていますか? アレルギー対応やヴィーガンなど限られた人々に向けた特別な食べ物という印象を抱いている人はまだまだ少なくないでしょう。ところがその状況は大きく変わりつつあり、身体や環境への配慮、食の多様性を実現させる有力な手段として世界的に高い関心が集まっています。日本においても最近では“Plant Based Food(プラントベースフード)”というネーミングをスーパーやカフェでもよく見かけるようになりました。しかもそれらは、大豆ミートや植物性チーズだけではなく、スイーツやハンバーガーといった身近な人気料理にまで浸透してきているようです。そこで今回は、注目される代替食品の最新事例をご紹介しながら、代替食作りにおける技術革新の可能性について考えてみたいと思います。
とんこつラーメンから本格クロワッサンまで登場!代替フードの進化最前線

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

濃厚とんこつスープを再現! 満足感を重視した「プラントベースラーメン」

特製絹ごしベジとんこつ ミラとん(1330円)(著者撮影)
特製絹ごしベジとんこつ ミラとん(1330円)(著者撮影)

 

はじめにご紹介するのは、博多発祥のラーメン専門店「一風堂」から発売されているプラントベースなとんこつラーメンです。一風堂は植物性油脂と大豆タンパクの研究開発を60年以上続けている不二製油株式会社と組んでとんこつ風のスープベースを共同開発し、2021年2月に初めて「プラントベース赤丸」を発売しました。

 

このラーメンは2023年5月に開催されたG7広島サミット(主要国首脳会議)の国際メディアセンター内プレゼンテーションコーナーでも大行列を生むほど話題に。

 

このラーメンのカギを握るのが、「MIRACORE」という技術。油脂とタンパクを乳化させることで生まれる特有の感覚に注目し、豚骨を一切使わずともまるで生の豚骨スープのようなコクと深みのあるスープを作り出しています。

 

同様のコンセプトのラーメンはバリエーションが少しずつ増えており、今回実食したのは、ルミネエスト新宿店限定の「特製絹ごしベジとんこつ ミラとん(1330円)」。

 

スープはもちろんのこと、麺にも卵などの動物性食品は使われていない(著者撮影)
スープはもちろんのこと、麺にも卵などの動物性食品は使われていない(著者撮影)

 

スープは豆乳ベースに野菜ブイヨン、昆布だしを合わせた三層構造。豆乳ベースには濃度をつけるためにじゃがいも、野菜ブイヨンには香り豊かなポルチーニを隠し味が。麺もスープに負けない強さを目指し、低加水の小麦粉の外皮を含んだ強力粉)を使用した卵白不使用の細麺が採用されています。

 

トッピングには伝統のとんこつラーメンをイメージしつつも、がんもどき、レッドキャベツのマリネ、グリルトマト、ごぼうチップが鮮やかに乗っています。

 

実際に食べてみると、その口の中に旨味や濃厚さが染み入り、うなってしまうほどの感動が押し寄せました。しかもしっかりとした食べ応えに関わらず、食後の胃もたれ感や重さはなし。また食べたくなる病みつき感が残りました。

世界三大珍味「フォアグラ」「キャビア」にも植物性代替品が登場

Dr.Foodsによる植物性フォアグラと植物性キャビアが全国28施設の結婚式場のコースメニューに採用された
Dr.Foodsによる植物性フォアグラと植物性キャビアが全国28施設の結婚式場のコースメニューに採用された

 

続いては、世界三大珍味の代替品。フードテック企業の株式会社Dr.Doodsが、植物性のフォアグラ、キャビアを開発したことで注目されています。

 

フォアグラは世界中で愛されている世界三大珍味の一つであるものの、強制給餌を行いガチョウやアヒルを育てる生産方法が議論の対象となり、欧米や欧州連合において生産や販売を禁止する動きがある食材。

 

同社は、フランス人生物学博士 Dr.Alexis Guionet(アレクシ・グイヨネ)とマーマフーズ株式会社の協業によって世界初の「植物性培養フォアグラ」の開発に成功しました。

 

具体的には、カシューナッツを麹によって特定の温度で発酵し、それを再度また特定温度によって発酵させたものを原料にしてパテタイプのフォアグラと、焼いて食べることができるフォアグラの二種類を製造しています。

 

植物性キャビア
植物性キャビア

 

植物性キャビアは主に海藻の抽出成分を始めとした多糖類を原料とし、独自の技術で油脂を内包させ、人口いくらのように凝固液のプールに滴下して製造されています。気になる味は、有名寿司店からのお墨付きをもらうほど食感までもが抜群だそう。海外への進出にも成功しています。