〈対策4〉金融機関の認知症に対応した信託商品を使う

→信託できるのは金銭のみ

近年、認知症による預金口座凍結の問題に対応するために、金融機関では、認知症に備えた信託商品を用意しています。これらの信託商品では、あらかじめ金融機関に一定額以上のお金を預け、お子さんや親族などを代理人に指定しておきます。

その後、もし本人が認知症になった場合には代理人が決められた手続きを行い、領収書や請求書を提出することで、医療費や介護費などを金融機関に預けた財産から受け取れるというものです。先ほど説明した、委託者と受託者が信託契約を結ぶ「家族信託」と、金融機関が提供する信託商品には、大きく2つの違いがあります。

一つ目は、家族信託では受託者となったお子さんや親族が託された財産を管理しますが、金融機関の信託商品では金融機関が金銭を預かり管理します。家族は代理人となり、本人が医療や介護を受けるために必要な費用を、金融機関に預けたお金から受け取り、支払いを代わりに行うのが主な役割となります。

二つ目の違いは、信託できる財産についてです。家族信託の場合、金銭や不動産、有価証券など、基本的に信託財産に制限はありません。一方、金融機関の信託商品の場合、預けられるのは金銭のみです。
金融機関により最低の信託金額が決められており、200万から1,000万円の間で設定されていることが多いようです。

このほか、信託の自由度についても、家族信託では自由に内容を決められるのに対し、金融機関の信託商品では、あらかじめ内容が決められており、自由度はほとんどありません。また、費用面についても、家族信託は専門家への初期費用(数十万円以上が一般的)のみの支払いが多いのですが、金融機関の信託商品では、初期費用に当たる信託設定時報酬(信託金額の1.1〜1.65%が一般的)に加えて、毎月の管理手数料や運用報酬などが発生する場合もあります。

このように、金融機関の信託商品は、前述の家族信託とは大きく異なりますが、信託したい財産が金銭のみの場合、口座凍結の対策としては、有効でしょう。