高齢化のいま、多くの人が直面する「相続」の問題。大変そうなイメージがあるものの、具体的な内容まで理解している人は、意外と少ない。ここでは、相続のサポートを多く行ってきた、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が、相続について最低限知っておきたい基礎知識を解説する。
「遺言書」の絶大な効力をもってしても奪えない〈相続人の権利〉とは?…相続専門税理士が教える、必ず知っておくべき相続のキホン
遺言者の死と同時に効力発揮する遺言書だが「遺留分」の侵害はできない
遺言には、相続に関する指示や財産の処分、身分に関わる事項、遺言の執行に関する指示などを記録することができる。
遺言は、遺言者の死と同時に効力が生じる。逆にいうと、生前なら遺言者はいつでも遺言を変更・撤回することが可能で、新たな遺言を作成することで、以前の遺言を無効にできる。
ただし、遺族には「遺留分」といって、法律で最低限保障される権利があり、遺言でもこれを侵害することはできない。
遺言の方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」などの普通方式がある。
自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・署名を自筆で記載するという、手軽でシンプルな方法だが、それゆえに紛失や改ざんの恐れがある。公正証書遺言は、公証人と証人の立会いの元で作成され、費用はかかるものの、法的な確実性が高い。
特定財産承継遺言は、遺言者が特定の相続人に特定の財産を相続させる意思表示をするもので、遺贈とは区別される。
遺贈とは、遺言者が第三者に財産を与える行為であり「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類がある。包括遺贈は、遺産全体または一定割合を指定するもので、一方の特定遺贈は具体的な財産を指定するもの、とされている。
遺言書が発見された場合、とくに自筆証書遺言の場合は、その検認を家庭裁判所で行う必要がある。これは、遺言書の真正性を確認し、遺言の執行におけるトラブルを防ぐためのもので、検認を受けずに勝手に開封してしまうと、過料を科されたり、相続人の欠格事由ともなるため、注意が必要だ。
遺言執行者とは、遺言によって指名された者で、遺言の内容に従って相続財産の管理を行うこととなる。相続手続きは、死亡届の提出から始まり、相続税申告まで様々な手続きの期限が決められているため、遺言執行者は、すみやかに財産目録の作成や、遺言の執行手続きを行うことが重要となる。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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