Aさんは対象外だが…年金は「保険料の免除」を受けられることも

Aさんは大急ぎで年金事務所に行き、指定された保険料を納付したことで、なんとか差押えを免れることができました。「助かった……」と、とりあえずは安心した様子のAさん。

Aさんは所得も高かったため、保険料をそのまま納付しなければなりませんが、AさんおよびBさんの所得が少なかった場合は「保険料の免除」を受けられることがあります。免除を受ける場合は申請をする必要があり、免除の対象になる場合は過去2年分遡って申請することが可能です。

納付も免除申請もせず放置し、その結果「未納期間」として確定した場合、将来の年金にも影響します。

老齢基礎年金の支給額は、40年間(20歳~59歳まで)納付すると年間81万6,000円(2024年度の68歳以下の場合)です。しかし、未納期間分の年金は0円で計算されます。つまり、未納が多いほど年金額が少なくなってしまうのです。

Aさんには約3,000万円の貯蓄があるものの、当然、収入がなければ貯蓄は減るばかり。しかし、原則65歳から支給される老齢基礎年金は、どれだけ長生きしても生涯受給できます。これが公的年金制度の大きな強みです。

今まであまり考えてこなかった年金制度の話を聞いたAさんは「こんなことならはじめからきちんと納めておけばよかった……若いころの安易な判断をすごく後悔しています」と反省。そして「いまさら虫のいい話かもしれませんが、将来の年金受給額を増やす方法はありますか?」と、筆者に尋ねました。

「付加年金」「60歳以降の任意加入」で将来の年金受給額アップ

Aさんは58歳。国民年金は60歳になるまで加入義務がありますが、これから国民年金保険料(2024年度:月額16,980円)に併せて付加保険料(月額400円)を納付すれば、老齢基礎年金だけでなく付加年金(付加保険料1月納付につき年額200円)も増やすことができます。

また、現行制度上、60歳以降は国民年金に加入義務はありませんが、任意加入することもでき、引き続き国民年金保険料及び付加保険料を納めれば年金額が増えます。過去の未納期間が多かったAさんの場合、60歳から65歳までの5年間の任意加入が可能です。国民年金保険料と付加保険料あわせて60ヵ月分となると100万円以上かかりますが、将来の老齢基礎年金は年額10万2,000円、付加年金は年額12,000円それぞれ増額できるため、検討の余地はあるでしょう。

また、現在Aさんは個人事業主ですが、法人化することで厚生年金に加入する方法もあります。もっとも、法人化のメリットやデメリットは年金以外にもさまざまであるため、その点も含めて慎重な検討が必要です。

年金制度について基本的な知識を得たことで、不安が軽減されたAさん。「これからは保険料をきちんと払いながら、将来の年金受給額を増やすことに努めたい」と話してくれました。
 

井内 義典
株式会社よこはまライフプランニング
代表取締役