魚介類や鶏肉、豆類などは「健康なタンパク質」と言われる一方で、牛肉や豚肉、あるいはソーセージやハムなどは、健康にあまり良くないタンパク質と分類されがちです。しかし、本当にそれは正しいのでしょうか? 本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、肉と健康の関係について解説します。
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さらに、赤い肉については、昨今の温暖化との関連も見逃すことができません。
牛は、農業界で気候変動に寄与する温室効果ガスの1番の産生源であることが知られています※4。牛のげっぷに含まれるメタンの量は、1頭あたり年間100㎏にも上るといわれており、さらにメタンは二酸化炭素の28倍もの力で温暖化に寄与するとも考えられています※5。
牛の直接的な影響だけではなく、牛を育てるための牧場や餌の確保などで、人間の食物を育てる機会が失われ、先進国の肉の消費のために、発展途上国の食品確保の機会を奪い続けていると考える専門家もいます※6。
このような背景から、欧米諸国では必ずしも個人の健康のためというわけではなくても、ベジタリアンやビーガンなどの嗜好を持つ人が特に若者を中心に増える傾向にあります。
また、産業界でも、Beyond Meatのように、代替肉(フェイク・ミート)を開発する企業も増えてきました。私が住むニューヨークでも、チェーン店のドーナッツ屋やハンバーガーショップなどでは、必ずといっていいほどフェイク・ミートのオプションがあります。
牛乳にも、Oatlyのようなオートミルクやアーモンドミルクへの置き換えが進んでおり、これらもコーヒーショップなどで見かけることが多くなりました。もはやOatlyを置いていないスーパーを見つける方が難しいというぐらい、ニューヨーク市内ではOatlyも急速に浸透しています。
私自身何度か試してみたことがありますが、フェイク・ミートもオートミルクも味が良く、料理の一部として食べている分には牛肉や牛乳などとほとんど区別がつきません。
これらの食品はこれからさらに浸透し、食品の主流になっていくかもしれません。少なくとも私の住むニューヨークでは、すでにそれぐらい日常生活に溶け込んできています。
赤い肉や加工肉を食べる習慣がある人は、週に1食でも白い肉や代替肉に変えてみる。その一歩が、病気のリスクをわずかかもしれませんが減らし、ひいては地球の健康を守ることにもつながる。そんな風に考えることができそうです。
肉の中でも、いわゆる「赤い肉」や加工肉には、発がん性や心臓・血管の病気のリスクとの関連が知られています。肉は多くの人にとってタンパク質の重要な摂取源の一つですが、「白い肉」や代替肉がより健康な置き換えになるのかもしれません。
※1:Chan DSM, Lau R, Aune D, et al. Red and processed meat and colorectal cancer incidence: meta-analysis of prospective studies. PLoS One 2011; 6: e20456.
※2:Bouvard V, Loomis D, Guyton KZ, et al. Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. Lancet Oncol 2015; 16: 1599–600.
※3:Wolk A. Potential health hazards of eating red meat. J Intern Med 2017; 281: 106–22.
※4:Xu X, Sharma P, Shu S, et al. Global greenhouse gas emissions from animal-based foods are twice those of plant-based foods. Nat Food 2021 29 2021; 2: 724–32.
※5:Cows and climate change | UC Davis. https://www.ucdavis.edu/food/news/making-cattle-more-sustainable (accessed Nov 5, 2021).
※6:COWSPIRACY: The Sustainability Secret. https://www.cowspiracy.com/facts (accessed Nov 5, 2021).
山田 悠史
米国老年医学・内科専門医