色や香り、触感といった五感で泉質を楽しめることも「源泉かけ流し温泉」の醍醐味のひとつ。秘湯の宝庫、東北地方では、泉質も佇まいも個性あふれる温泉に巡り合えます。弁護士で温泉博士でもある小林裕彦氏による著書『温泉博士×弁護士が厳選、とっておきの源泉かけ流し325湯』(合同フォレスト)より、東北地方にあるおすすめの秘湯を紹介します。
レトロな雰囲気に癒される…岩手県&宮城県の秘湯
6.台温泉 水上旅館
単純硫黄泉です。台温泉は、小さな旅館が立ち並んで湯治場的な雰囲気がする、良い温泉地です。自家源泉を持っている旅館が多く、それぞれ泉質は微妙に異なります。
大型旅館が立ち並ぶ近くの花巻温泉とは、次元が異なるくらいにレトロで懐かしい感じがする温泉地です。この水上旅館は台温泉の中でもさらにひなびていて、湯治場の雰囲気が強いです。
浴槽は一つだけで、貸し切りで入れます。源泉が出てくる所があり、自分で浴槽の温度を調整します。体にまとわりつくような、じわーっとくる感じがします。
源泉の新鮮さと濃さを実感できます。
7.金田一温泉 仙養舘
アルカリ性単純泉です。浴室のレトロ感が素晴らしいでしょう。窓も仕切りも浴槽もすべてレトロです。シンプルな丸型の浴槽の縁から源泉があふれていて、源泉が流れた所が変色しています。源泉の温泉成分の濃さを感じさせます。
ぬるめでまったりとした泉質です。微かな温泉臭がします。源泉がほどよく体になじむ感じがします。湯上がりは、肌がしっとりします。
この旅館は玄関を入った時から、どこか癒やされる感じがします。
座敷童子で有名な温泉地にあります。何軒か旅館がありますが、ここ仙養舘は体の力が抜けるような独特の癒やし感があります。
8.鬼首温泉 露天風呂の宿 とどろき旅館
アルカリ性単純泉です。露天風呂、なかなか風情があるでしょう。
どこか癒やされる雰囲気があります。入り口は男女別ですが、混浴です。広くて、所々にある岩に隠れることができるので、女性も安心して入れると思います。内湯もなかなか味があります。
泉質は、実にやわらかいです。肌によくなじんでしっとりします。温泉臭も実に芳しい。温泉成分が濃厚な、アルカリ性単純泉です。
鬼首温泉とは、おどろおどろしい名前ですが、鳴子温泉郷の中に4、5軒の旅館がある、小さな温泉地です。鳴子温泉からは、車で20分くらいの所にあります。山の中の秘湯です。
9.鳴子温泉郷・中山平温泉 なかやま山荘
含硫黄–ナトリウム–炭酸水素塩・塩化物泉です。中山平温泉は、鳴子温泉郷にあります。「うなぎの湯」ともいわれる、ヌルヌルとろとろの泉質です。男女別の浴槽もいいのですが、「桐の湯」が素晴らしく、とろとろ感があります。
「源泉に近いので、とろとろ感が強いのじゃないかな」と女将さんはおっしゃっていました。確かに、浸かると体に膜が張ったような感じがする独特の肌触りです。
桐の湯は男女入れ替えで、男性は午後2時から午後6時までしか入れません。女性優先なのは、女性に美肌になってほしいからだそうです。
10.鳴子温泉 村本旅館
浴槽の温泉表面に、カルシウム分の膜が張っているのが見えますか? パリパリです。わが国には、こんなに凝固分が強烈な温泉もあります。ナトリウム・カルシウム–硫酸塩・炭酸水素塩泉です。
浸かると、ずっしりと温泉成分が体にまとわりつきます。ほんの短い時間でも、かなり疲れます。良い温泉の証拠です。
鳴子温泉は個性的な泉質の温泉が多いという点で、最強の温泉地です。ある意味、別府温泉や草津温泉よりもすごい。この旅館は地元の観光協会に入っていないようで、知名度はあまりありませんが、ものすごい泉質です。
浸かった瞬間に、それまでの温泉の概念が変わります。
小林裕彦
小林裕彦法律事務所
代表弁護士