朝起きた時や人と話す時など、ふとした瞬間に気になる「口臭」。病気のサインであるという話も聞きますが、心配すべき口臭とはどのようなものなのでしょうか? 本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、「気にすべき口臭・気にしなくてよい口臭」について解説します。
3.気にし過ぎなだけ…「主観的口臭」
もう一つ、最後にご紹介するのが、主観的口臭あるいは偽口臭と呼ばれる口臭です。これは、実際には臭いはせず、他人からは確認できないものの、主観的に口臭が気になってしまっている状態のことを指します。実は、口臭を理由に病院受診する方の約4分の1がこれに該当すると報告されています※5。
その多くが精神心理的な認知の問題で、歯みがきを過剰に行ったり、うがいやブレスケアの使用を頻繁にしたりといった行動変容が見られることも多いという特徴があります※6。
また、稀に神経の病気やビタミンの欠乏でも、本当は臭いがないのに臭いがあると錯覚する症状が出ることがあります。
さらにいえば、新型コロナウイルス感染症でも、こうした錯覚が出ることがありえます。ただし、コロナウイルス感染症でこのような症状が出る場合、多くは同時か先行して発熱や咳といった他の症状が見られますので、そのような症状なしに不用意に感染を心配する必要はありません。
いずれにせよ、口臭が気になる場合に、同居のご家族やよく一緒にいる恋人、友人に確認し、臭いが気にならないと言われたら、それは主観的口臭の可能性が高く、病的口臭の心配はそう必要ではないでしょう。
病気のサインを見逃さない!「口臭チェックリスト」
以下の質問に該当する場合には病気のサインかもしれません。病院や歯科への受診をお勧めします。
② 口の中のケアを怠っていないか?
③ 喉の痛み、鼻づまり、発熱や体重減少といった口臭以外の症状があるか?
④ その口臭は、家族や友人にも指摘されるか?
※1:Fedorowicz Z, Aljufairi H, Nasser M, Outhouse TL, Pedrazzi V. Mouthrinses for the treatment of halitosis. Cochrane Database Syst. Rev.2008. DOI:10.1002/14651858.CD006701.pub2.
※2:Tonzetich J. Production and Origin of Oral Malodor: A Review of Mechanisms and Methods of Analysis. J Periodontol 1977.DOI:10.1902/jop.1977.48.1.13.
※3:Ferguson M, Aydin M, Mickel J. Halitosis and the tonsils: A review of management. Otolaryngol. - Head Neck Surg. (United States). 2014.DOI:10.1177/0194599814544881.
※4:Preti G, Clark L, Cowart BJ, et al. Non-Oral Etiologies of Oral Malodor and Altered Chemosensation. J Periodontol 1992. DOI:10.1902/jop.1992.63.9.790.
※5:Rosenberg M, Kozlovsky A, Gelernter I, et al. Self-estimation of Oral Malodor. J Dent Res 1995. DOI:10.1177/00220345950740091201.
※6:Falcão DP, Vieira CN, Batista De Amorim RF. Breaking paradigms: A new definition for halitosis in the context of pseudo-halitosis and halitophobia. J. Breath Res. 2012. DOI:10.1088/1752-7155/6/1/017105.
山田 悠史
米国老年医学・内科専門医