相続が発生したら、相続税はどうなるのだろう。もしも払いきれない金額だったら? そのような心配をして、不安になる人は少なくありません。ですが、基本的な計算式を知れば、おおよその目安が分かります。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
相続税はいつまでに納めればいい? 遅れたらどうなる?
では、相続税自体はいつ納めればよいのでしょうか。確定申告と同じ、翌年の3月15日…と思われる方もいるかもしれませんが、相続税は、申告期限と同じ、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に納付しなければなりません。また、申告書を税務署に提出するよりも先に納めてしまうことも可能です。
納税は、現金一括払いが原則ですが、税務署に現金で持ち込むのではなく、金融機関の窓口で支払うこともできます。また、納税額が1,000万円未満であれば、クレジットカードでの決済も可能です。
もし、期限までに相続税を納めなかった場合は、利息にあたる延滞税がかかることがあります。
延滞税の税率は、「延滞税特例基準割合」という難しい計算式を使いますが、2024年だと、期限から2ヵ月以内であれば2.4%、期限から2ヵ月を経過した日以降は8.7%と、かなり高い利率となっています。
相続税の納付も、申告と同じように、代表者が一括して行うのではなく、相続人が複数いる場合には、それぞれ納税額が異なるため、相続人は各自で自分の相続税を別々に納付する必要があります。
とはいえ、自分の相続税を納めてしまえば、それで相続税に関する手続きは完了、ということではなく、同じ被相続人から相続を受けたなかの誰か1人でも納税しない場合、その納税義務が自分にも課されてしまう、ということがあります。
これは「連帯納付義務」といい、同じ被相続人から相続した者同士は、連帯して相続税の納付義務を負うことになっているためです。
こういった事態を避けるためにも、全員でしっかりと話し合っておかなければいけません。
しかし、どうしても現金一括で納税できない場合は、代わりの財産で納める「物納」、もしくは、分割払いする「延納」を税務署に申し出ることが可能です。
もし相続人同士の話し合いがまとまらなかったら?
どうしても相続人のあいだで遺産分割の話し合いがまとまらず、10ヵ月の申告期限と納税期限に間に合わない…という場合でも、相続税申告を延期してもらうことはできません。
期限内に遺産分割できない場合は、法定相続分で分割したと仮定した申告書を作り、それを提出・納税することになります。それと同時に、あとから特例を適用することができるよう「申告期限後3年以内の分割見込書」という書面を作成し、提出するケースが多くみられます。
その後、遺産分割がまとまり、法定相続分と異なる分割になった場合、相続税申告を修正することになります。
相続税が足りなかった場合は修正申告を行い、追加で納税する必要があります。逆に、相続税を払いすぎていた場合は、更正請求を行い、税金を返してもらうことになります。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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