「戦争の世紀」である20世紀。ヨーロッパでは、ドイツとイギリスの覇権争いが繰り広げられます。日露戦争を開戦した日本は、結果的に有利な条件で講和条約を結ぶことができましたが、アメリカとの関係にひびが入ることに……。立命館アジア太平洋大学(APU)名誉教授・学長特命補佐である出口治明氏の著書『一気読み世界史』(日経BP)より、20世紀初頭の世界の流れを見ていきましょう。
日本の宣戦布告の理由は「南下するロシアの脅威に耐えかねて」ではなかった?…「日露戦争」開戦の知られざる“真実”【世界史】
梅屋庄吉が資金提供した孫文の革命、中国は南北に分かれる
明治時代の日本は進取の気概にあふれていました。だから中国から革命を志す人がどんどん留学にやってきました。孫中山(孫文)もそうですし、周恩来も日本で勉強しています。
孫中山と深い友情を結んで、資金提供をした梅屋庄吉という実業家もいました。渡したお金は、今の貨幣価値にして兆円単位になるともいわれています。
孫中山たちは清を打倒するため、何度も蜂起しますが、失敗が続きます。ついに成功したのが1911年、辛亥革命です。孫中山は南京で臨時大総統になり、中華民国が成立します。しかし、北京にはまだ、満洲族出身の清朝最後の皇帝、宣統帝(溥儀)がいます。
孫中山は、軍閥の宰相、袁世凱と取引します。「宣統帝の退位と引き換えに臨時大総統の座を譲る」と。しかし、袁世凱はとんでもない人で、自分が皇帝になろうとします。
その結果、中国では、南京に成立した孫中山の政府と北京の軍閥政府という対立の構図ができあがります。
出口治明
立命館アジア太平洋大学(APU)
名誉教授・学長特命補佐