JR西日本が生み出した生で食べられるマサバ「お嬢サバ」
話を戻しましょう。JR西日本と鳥取県との共同開発によって誕生したマサバは、JR西日本として第一号にあたる魚種で、2018年3月から出荷がスタート。岩美町にある地下水井戸陸上養殖センターでは直径8mの大きな水槽が9つあり、それぞれに約4,000尾のサバが泳いでいます。
ここでの最大のポイントは、自然ろ過された地下海水を使うこと。アニサキスなどの寄生虫やウィルスの侵入リスクが極めて低くなるのです。天然のサバが生食しにくいのはまさにこのリスクによるもので、生産者のみならず消費者にとっての大きなメリットを提供することが可能になるのです。
この安全な地下海水を水温、水流、給餌量等のコントロールを組み合わせること、成長予測に基づく計画的・安定的生産を行うシステムは確立し、レストランや魚専門店での提供が行われています。
また秀逸なのは、インパクトのあるネーミング。虫がつかないように大切に育てたという養殖プロセスから、箱入り娘から連想される“お嬢様”にちなんで「お嬢様サバ」と名付けられました。
陸上養殖のサバ、お味はいかに!?
現在このお嬢サバの養殖技術とシステムは確立し、鳥取県の他愛知県や静岡県にも養殖場が広がっています。寄生虫が付きにくい環境であること、衛生面や栄養面で配慮された給餌方法と、稚魚のトレーサビリティも加わり、消費者は安全性の高いサバを身近に食せるようになりつつあります。
そこで私は、東京都内のデパート魚売り場で販売されている静岡県産のお嬢サバを刺身で食べてみることにしました。皮の光沢感と色鮮やかな美しい身色に食欲を刺激されながら、冷静に口の中に入れてかみしめてみたところ、確かなおいしさを実感することができました。
青魚特有の臭みはまったくなく、それでいて濃厚な旨味が口の中に染み込んでいくような、深みのある味わいを堪能することができたのです。生サバへの憧れや期待感もあり、お世辞抜きにすばらしい刺身体験をした気分で満たされました。
さらに朗報としては、このお嬢サバ、白子や真子、肝まで食べられるそう。販売時期は産地により異なるものの、全体として概ね通年での販売が可能になりつつあります。サイズは1尾約250~300gとやや小ぶりであるものの脂はしっかり乗っているので、食べた時の物足りなさはありません。