1980年代のいわゆるバブル期に子ども時代を過ごし、バブル崩壊後、1993年から2005年の間に大学卒業を迎えた年代を就職氷河期世代と呼びます。そんな就職氷河期世代も50代となり、老後の生活について不安を抱える人も少なくありません。そこで今回、就職氷河期の煽りを受けて非正規雇用者となったAさんの事例をみていきましょう。石川亜希子氏FPが解説します。
私が太っているのは「お金がない」からなんです…年収340万円の54歳・非正規男性が〈絶望の老後〉を前に自虐全開→少しだけ前を向けたワケ【FPの助言】
食費だけではない…節約可能な「その他」の正体
また、「その他」項目の4万円についても、毎週末のパチンコ通いであることが判明しました。しかし、ギャンブルにはまっているというより、同じ就職氷河期時代であっても立派なキャリアを築いている大学時代の同期も多く、現実逃避の側面もあったようです。
こうして、Aさんの固定費改善は、食費とギャンブル費を減らすことに絞られました。
これらの項目を減らすことは、健康的な生活にシフトすることにもつながり、長い目で見れば将来の医療費や健康寿命などにも影響をおよぼすでしょう。
日本に潜む「相対的貧困」とは
日本では、単身高齢者の増加やひとり親世帯の増加、雇用の非正規化などに伴って、「相対的貧困層」が増えているといわれています。
相対的貧困とは、その国の水準と比較して困窮な状態にあることで、具体的には、世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態のことを指します。単身世帯では、手取り年収127万円(2018年)がボーダーラインとなっています。
Aさんは現時点では相対的貧困にはまったく当てはまらないものの、60歳以降になると、途端に当てはまってしまうことになります。
また、厚生労働省から発表された2022年度の国民生活基礎調査では、日本の相対的貧困率は15.4%となっています。この数値は先進国のなかでも高く、Aさんのような単身高齢者の増加にともなって、これからも上昇していくことは十分に考えられるでしょう。
さらに問題なのが、貧困は「連鎖する」という点です。
教育や体験といった機会の喪失は、学力や学歴、就職にも影響し、次世代の教育や体験の機会の喪失につながります。また、適切な栄養を摂取できないと、健康面での問題も発生しやすくなるでしょう。
生活や教育、就職など、さまざまな分野で機会を喪失してしまうと、人との交流も失われていってしまいます。
FPから固定費等の削減について提案されたAさんは、当初「そんなことしたら私はなにを楽しみに生きていけばいいんですか」と、実践する気はなさそうでした。しかし、自身の現状について客観的にみることで危機感が生まれたそうで、早速自炊からはじめることを決意したそうです。