1980年代のいわゆるバブル期に子ども時代を過ごし、バブル崩壊後、1993年から2005年の間に大学卒業を迎えた年代を就職氷河期世代と呼びます。そんな就職氷河期世代も50代となり、老後の生活について不安を抱える人も少なくありません。そこで今回、就職氷河期の煽りを受けて非正規雇用者となったAさんの事例をみていきましょう。石川亜希子氏FPが解説します。
私が太っているのは「お金がない」からなんです…年収340万円の54歳・非正規男性が〈絶望の老後〉を前に自虐全開→少しだけ前を向けたワケ【FPの助言】
改善された家計…“思わぬ効果”も
食材をストックするような大きな冷蔵庫もないから、料理はしたことがないと言っていたAさんでしたが、このままの生活ではいけないと、少しずつ自炊に努めるようになりました。スーパーで野菜の値段の高さを知り、改めて実家から野菜を送ってもらえることのありがたさを実感するようになりました。
また、久しぶりに実家と連絡を取ってみたところ、一度顔を見せるように懇願され、GWに10年以上ぶりに帰省することにしたそうです。
食生活に気をつけるようになると、休みの日も健康的に過ごしたい気持ちが芽生え、パチンコにあてていた時間もウォーキングやジョギングをするようになりました。家に体重計がないため正確にはわかりませんでしたが、気がつけばズボンが緩くなり、会社でも、なんだか明るくなった、若返ったと言われるように。60歳以降の再雇用についても明るい兆しが見えてきました。
なにより、毎月の支出を抑えることで月に数万円を貯金できるようになり、毎月iDeCoの積み立ても始めました。50代から始めると運用益としてはそこまでメリットはないかもしれませんが、年間4万円ほどの節税効果が見込まれます。
こうして普段の生活が変わったAさんは、老後を少しだけ前向きに考えられるようになりました。
「相対的貧困」は他人事ではない
日本の相対的貧困の問題は、転職や離婚、病気、災害などで、誰にとっても起こりうるものです。そのような状態が続くと、正しい判断をすることも難しくなってしまいます。一方、相対的貧困は生命の危機に瀕するほどの経済状態ではないため、周囲からは貧困状態にあるようにみえず、問題が潜在化しやすいという特徴もあるのです。
Aさんのように、ひとりで抱え込まずに周囲に相談したり、家族や友人と交流を持ったりすることは、自分の状況を俯瞰して見ることができるようになり、食生活や経済状況の改善につなげられるため、非常に大切です。また、行政や自治体の情報も積極的にチェックしましょう。
石川 亜希子
AFP