「会社、辞めてきた」年収800万円、エリート会社・父が電撃退職! 「65歳の年金支給まで暮らしていける?」徹底検証!…定年まで働かなくてもいい「羨望の貯蓄額〇〇円」

登場人物
・ゆめこさん(以下、ゆ)……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。

・ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。

・有識者のおじさん(以下、お)……難しい単語や複雑な制度を解説してくれる物知りな優しいおじさん。
・タニグチ マサキ(以下、主)……今回の主人公。22歳の新卒会社員で、父が55歳で早期退職をした。

・父(以下、父)……主人公の父。55歳の大卒、元大企業会社員で、早期退職をした。

・母(以下、母)……主人公の母。

父:「会社やめてきた」

主:「ええー!?  俺たち家族、これからどうすんだよ!」

俺の名前は谷口マサキ、22歳。大学を卒業して社会人になったばかりの新米だ。俺には目標にしてる人がいる。それは俺の親父だ。親父が就職活動をしていた頃はまさに就職氷河期真っ只中。どこの企業も新卒採用を渋るなか、有名私立大学の経済学部出身の親父は誰もが知る大企業に運よく就職できたそうだ。

それから真面目に仕事に打ち込み、結婚して子どもができて、30代でマイホーム購入という、まるで絵に描いたような順風満帆生活。だからといって俺は親父の人生を「平凡でつまらない」とも、親父自身を「苦労知らず」とも思ったことはない。

煙草や酒もやらず、ひたすら貯金が趣味だなんて、一見するとどこにでもいそうな地味なおっさんだが、決してケチな訳ではない。夏休みには家族でキャンプにいったり、「勉強になるから」と海外旅行に連れていってくれたこともある。

忙しいなかでも俺たち家族を大切にしてくれているのをガキの頃から感じていた。しかも国内で災害があると必ず寄付をしたり、有休をとってボランティア活動をしていることも知っている。そんなわけで俺にとっては憧れであり、ちょっと越えられそうもない相手だ。

ワ:マサキさんのお父さん、すごいね! 子どもに尊敬されるのも分かるよ。

ゆ:そうですね、ですが何やらお父さんの心境に変化があったようですよ。

主:そんな親父が55歳になって突然……。

父:「ただいまー」

主:「おかえり、今日は早かったね」

父:「ああ、実はな、みんなに話がある。父さん……会社やめてきたんだ!」

主:「ええー!?」

主:「何勝手なことしてるんだよ…どうすんだよ! 俺まだ給料だって低いし、奨学金の返済だってあるし……!」

父:「まぁ落ち着け、マサキ」

主:「これが落ち着いてられるかよ! これから、どうやって生活していくつもりだよ!」

父:「早期退職制度のおかげで、退職金が定年と同じだけ貰えるんだよ」

主:「早期退職制度……? なんだよそれ??」

お:早期退職制度というのは定年の60歳よりも前に自主的に退職できる制度です。早期退職制度を導入している企業は全体の51%ほどです。

制度のある会社のうち、98%は退職一時金の優遇措置があります。優遇措置のある会社の内52%は定年退職と同等に扱い、残りの48%は退職時の年齢に応じて支給額を加算しています。

ゆ:つまり、早期退職制度を利用したことにより退職金額が減ってしまうというケースは非常にまれということです。むしろ約半数が、制度を利用しない場合の退職金に加算された額を受け取っています。

マサキさんのお父さんは退職金を定年退職時と同じ額、受け取れたようですね。

ワ:でも、年金がもらえるのは原則65歳からだよね。それまで退職金だけで家族3人暮らしていけるのかな?

お:モデル退職金をみると、大卒の文系職が定年退職した場合、2,564万円です。

ゆ:つまり、マサキさんのお父さんは55歳で会社を辞めて、2,500万円ほどの退職金を手にしたと推測されます。2,500万円の大金とはいえ、人生100年時代といわれる現代。本制度を利用して一足早く退職金を手にした後、さらに再就職をして別の会社で働く道を選ぶ人の方が多いようです。

ワ:そっか、じゃあマサキさんのお父さんも別の会社で働くんだね!

主:「なんだ、それじゃあ転職するってことか。びっくりさせるなよ~。次の会社はどんな会社?」

父:「いや、父さんはもう現役をスパッと引退だ。もう働かん」

主:「ええ!?  ちょっと…なんだよそれ!」

父:「まあ聞け。実はこの家、もうローンの返済は終わっているんだよ」

主:「へ?」

父:「いや~繰り上げ返済は正直楽じゃなかったけど、老後に住宅ローンを気にせず暮らすために、若いうちに稼げるだけ稼いで完済しようって母さんと決めてたんだ」

主:「そうだったんだ…でも生活はどうすんだよ! 家だけあったって普段の生活費はどうするんだ? 俺の稼ぎだけじゃ父さんと母さんを養えねえよ」

父:「それはちゃんと積み立ててある」

お:政府調査によると、「世帯主が59歳」までの消費支出は月平均25万円。「世帯主が60歳から64歳」までの消費支出は月平均28万7,000円です。

ワ:お父さんは55歳だよね。

ゆ:マサキさんファミリーの場合、単純計算で年金受給が始まる65歳までに3,200万円ほどの生活費を確保しておきたいところですね。

ワ:3,200万円! お父さん大丈夫かな?

ゆ:さらに、早期退職をしたお父さんは65歳からの年金額が減ってしまうんです。

ワ:そうなの?

お:大卒者が定年まで平均給与で働き続けた場合、厚生年金は月10万7,000円程です。国民年金と合わせて月17万円を手にする計算になります。

ゆ:しかし、55歳で早期退職をしたマサキさんのお父さんの場合、厚生年金は月9万2,000円ほどです。1万5,000円少なくなります。

ワ:ええ? 55歳で早期退職すると、年金がそんなに減っちゃうの?

お:マサキさんのお母さんは専業主婦です。国民年金が満額支払われたとして、2人で手にする年金は月22万円ほど。手取りにするとだいたい18~19万円ほどです。

ゆ:年金受け取り後の生活を30年と想定した場合を考えてみましょう。マサキさんのお父さんのように55歳で早期退職・完全引退した大卒会社員の場合、シニア世帯の消費支出平均額を加味すると、8,000万円ほどの貯蓄が必要ということになります。

父:「父さんと母さんで結婚前から積み立てた貯金と、今回の父さんの退職金を合わせれば大体8,000万円くらいになるんだ」

主:「そ、そんな貯金いつの間にしてたんだよ……」

父:「ははは、酒も煙草もせずにコツコツやれば案外貯められるもんだぞ」

主:「はあ、じゃあ……2人はなんとか生活できるんだな?」

父:「マサキの心配するようなことはないよ」

主:「なんだ、驚かすなよ……」

父:「むしろ、お前の方はどうなんだ、マサキ」

主:「え?」

父:「もし将来的に結婚を考えているんだったら、今から貯金なり資産運用なり考えないとやっていけんぞ」

主:「お、俺のことは今はいいんだよ」

父:「ははは、頑張れよ」

ワ:お父さん、悠々自適の引退生活だね!

ゆ:現段階ではそう見えますね。とはいえ、油断は禁物です。マイホームは住宅ローンを完済したあとも修繕費や固定資産税がかかります。親や親戚、自分たちの介護がいつ必要になるか分かりません。突然病気やケガに見舞われるかもしれません。必ずしも貯蓄が8,000万円あれば「誰でも早期引退して悠々自適の生活ができる!」とは決して言い切れません。

ワ:そっか、それぞれ環境が違うもんね。

母:「あらあらお父さん、そこは違うわよ」

父:「あれれ? 本当だ。YouTube見て予習したんだがな。はて?」

主:親父は引退してからおふくろに習って手芸をしている。これまで仕事ばかりだったから、新しいことを始めるのが楽しいみたいだ。俺も親父のように豊かな老後生活を目指して、今から貯金をして、資産運用を勉強することにした。