「投資は買うよりも売る方が難しい」という投資の格言があるとおり、投資初心者にとって鬼門となるのが「出口戦略」です。そこで、『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者でCFPの小山信康氏が、個人投資家が新NISAをはじめとした資産運用で、損をしないために知っておきたい「投資信託の売り方」について解説します。
「新NISA」で損をしないため…知っておきたい〈投資信託の売り方〉のポイント【CFPが解説】
新NISAはあくまで「長期投資」用
70~80代の多くが経験している、「財テク」の苦い思い出
「株式投資は7割の人が損をしている」と言われます。ここで言う「株式投資」は、頻繁に個別銘柄の株式を売買するケースを意味しますが、とくに年齢的に現在70~80歳くらいの多くの方々が、現役時代の頃に株式投資で失敗しています。
彼らが失敗した大きな原因のひとつとして、「短期的な儲けに走って、資産を長期的に成長させる視点に欠けていた」ことが挙げられます。
象徴的なのが、当時使われていた、「財テク」という言葉です。高度な技術を意味するハイテクをもじり、「財務」や「財産」を殖やす手段をまとめて「財テク」と呼ばれていたようです。小手先の株式取引で金を儲けようとしていた姿が思い起こされます。
彼らが夢見ていたのは、短期的に大儲けすることであり、考え方は投機やギャンブルに近かったと言えるでしょう。
しかし、新NISAは短期投資用のものではないことを理解していただけるはずです。新NISAにおいて、つみたて投資枠で購入できるのは、投資信託のみとなっています。少し遊べる枠を残してはいるものの、投資信託によって長期的な資産運用をしてほしいという政府の意図が読み取れます。
新NISAを有効活用するのであれば、短期の儲けは後回しにして、今ある資産やこれからの収入を、長期的に育てる意識を持って商品を選び、「売却のタイミングをはかる」というよりも、売却するタイミングをゆっくり待てるだけの時間的余裕を持っておくことが必要です。
売るタイミングを逃すと“塩漬け”に
「投資は買うより売る方が難しい」
これは、昔から使われている投資の格言です。投資経験のある方はすでに実感されているでしょうし、初心者の方も投資をスタートすればすぐに実感するはずです。
たとえば、購入した投資信託の基準価額が値上がりしても値下がりしても、売却しなければ損益は確定しません。この確定しない儲けや損失のことを「評価損益」と呼んでいます。
売らなければ儲けがさらに増える楽しみがありますが、売った瞬間にその楽しみは消えてしまいます。もちろん、その後値下がりする不安から解消されるというメリットはありますが、どうしても心理的に前者の方が勝ってしまうため、ズルズルと持ち続けてしまうケースが多くなってしまいます。
新NISAのメリットのひとつ「非課税投資期間の無期限化」により、値下がりしても、じっと値上がりを待つ余裕ができました。ただ、無期限となってしまうと、「いつか、そのうち、値上がりするだろう」というあいまいな時間設定でも投資が可能となってしまいます。
余裕をもって気長に長期投資を行うべきですが、何も目標設定もせずダラダラと続けてしまうのは、「塩漬け」の危険信号です。