交通の利便性がいい、眺めがいい、共用施設が充実している……こうした理由から、魅力の多い「タワマン」に憧れを抱いている人は少なくありません。しかし、『60歳からのマンション学』(講談社)の著者でマンショントレンド評論家の日下部理絵氏は、「住んでみないとわからないデメリットも多い」といいます。今回は、そんなタワマンの「隠れデメリット」についてみていきましょう。
外出が面倒、窓掃除の作業員と目が合う…住民が感じる「タワマンならでは」のデメリット【マンショントレンド評論家が解説】
高層階からのいい眺めは“3日で飽きた”…タワマンの「デメリット」
魅力的なタワマンだが、もちろんいい点ばかりではない。
タワマンの醍醐味である眺望に関しては、早い人だと3日で飽きた、近くにもタワマンができ眺望が悪くなった、という意見は多い。むしろ全面ガラス張りだと、温室状態もそうだが、カーテンの既製サイズがあわず特注で高くなってしまったと嘆く声も。
さらに私自身も経験したことがあるが、ゴンドラできた窓掃除の作業員と目があい、何とも気まずかったことがある。せめても服をきちんと着ていて良かったと思ったものだ。
タワマンに多い「オール電化」も“瑕に玉”
またタワマンの多くにオール電化が採用されている。お風呂などで使う電気給湯器、キッチンにはIH調理器が採用されていることが多い。
電気給湯器を室内につける場合、スペースがもったいないし、音も気になることがある。IH調理器はフライパンなどの器具を選ぶほか、実際の火力は強いにもかかわらず直火ではないため弱いと感じたり、鍋底がIHにあたっていないと加熱が停止するため、フライパンなどを振ったり傾けたりといった動作ができなかったり、IH調理器特有の「ブーン」「ジー」という音に悩む人も多い。
しかも特定の人には「キーン」という高い音が聞こえたり、補聴器の装用に大きな雑音を発生させたりする場合もある。音以外にも取っ手にわずかな振動を感じたり、調理器具が動いたりすることもある。
IHは、電磁誘導加熱という電気の特性を活用して温めるのだが、これはIHに調理器具が共振して出る音である。鍋などの位置をずらしたり、置きなおしたり、火力を落とすことで、音が止まったり小さくなったりする。調理器具を変えるとおさまることもある。
もしガス器具を使いたい場合、マンション全体・全室がオール電化だと、ガスの導入は管理組合の合意形成が必要で極めて困難である(もっともガスと電気の併用・オール電化の選択ができるようなマンションであれば可能性はある。よく確認が必要だ)。
さらにオール電化は停電時に、使用制限がかかることも多い。エレベーターが停まれば共用部分が薄暗いなか階段で高層階までの昇り降り。エントランスのオートロックも解除され開きっぱなし、玄関ドアも電子キーのみの採用だと部屋の扉すら開かない。むしろ防犯設備が仇になり、便利が不便を招くといった事態になりかねない。
またタワマンだけではないが、近年のマンションは落下防止のため、手すりより低い位置にしか干せなかったり、洗濯物の外干しが禁止されていたり、タワマンではそもそもベランダ自体が設置されていないことも珍しくない。