3月に入り春を感じる日も多くなってきました。気温が上がり、晴れの日が続くと気になるのが紫外線ですが、実は3月の紫外線量は9月と同等で、5月には真夏並みの強さに。肌のためにも今からUVケアを行うことが重要です。皮膚科医の吉木伸子医師に日焼け止めの選び方や正しい塗り方、アウターケアについて解説いただきました。
そもそも紫外線はなぜ肌にとってよくないの?
――そもそも紫外線はなぜ肌にとってよくないのでしょうか?
吉木伸子医師(以下、吉木):肌表面にある皮膚のバリア機能には、肌の水分を保持する作用があります。紫外線によって皮膚のバリア機能が低下すると、肌の水分量をキープできなくなるため、肌が乾燥してしまいます。あまり意識していない方も多いのですが、紫外線によるダメージは、肌荒れだけではなくシミやそばかす、しわ、たるみなどの肌トラブルにもつながります。できてしまったシミやしわはスキンケアではなくならないため、できないようにすることが大切です。
日焼け止めの表示「SPF」や「PA」とは?
――日焼け止めに表示されている「SPF」や「PA」について教えてください。
吉木:SPF(Sun Protection Factor)は、シミやそばかすの原因となるUV-B(紫外線B波)をカットする効果の高さを示す数値です。数値が大きいものほど効果が高く、SPF50を超えるものは「SPF50+」と表示されています。一方、PA(Protection grade of UV-A)は、しわやたるみの原因となるUV-A(紫外線A波)をカットする効果を「+」~「++++」の4段階で表した指標です。+の数が多いほどUV-Aをカットする効果が高くなります。
吉木:また、日焼け止めに含まれる紫外線を防ぐ成分は、大きく紫外線吸収剤(ケミカル)と紫外線散乱剤(ノンケミカル)の2種類に分けられます。敏感肌の方は、刺激になりにくい「ノンケミカル」や「紫外線吸収剤不使用」のパッケージ表示の製品を選びましょう。石けんで簡単に落とせる商品が多いので、クレンジングによる肌への負担も減らすことができます。他にも、無香料・無着色など低刺激な日焼け止めを選んで、できるだけ肌に刺激を与えないようにしましょう。
「5点置きがおすすめ」日焼け止めの正しい塗り方は?
――正しい日焼け止めの塗り方を教えてください。
吉木:日焼け止めは、塗り方次第で効果を最大限に得られないこともあります。しっかり保湿した肌に、たっぷりの量の日焼け止めを、ムラなく均一に塗ることが大切です。
日焼け止めをムラなく塗るためには、5点置きがおすすめです。大きめのパール粒大くらいの量の日焼け止めを手に取ったら、両頬、鼻、額、あごの5点に置いてから、塗り広げていきます。この時に手のひらではなく、指全体を使ってすみずみまで塗るのがコツです。顔の中心から外側に向かって、ムラなく塗りましょう。全体を均一に塗り終えたら、同量の日焼け止めを手に取り、再度5点置きして全体に重ね塗りするのがおすすめです。重ね塗りすることでムラや塗り残しが生じるのを防ぎ、日焼け止めの効果を持続させるのに役立ちます。
身体は塗る範囲が広いので、日焼け止めを容器から直接肌の上に出して塗りましょう。塗る範囲に合わせて線状にたっぷりと出すのがポイントです。日焼け止めを線状に出したら、手のひら全体で大きく円を描くようなイメージで塗り広げます。この時、肌をこすらないように、やさしく塗るように意識しましょう。
手の甲から腕にかけては日焼けしやすい部位です。顔と同様、全体を塗った後に重ね塗りをして、紫外線から肌をしっかりと守りましょう。
また、朝、きちんと日焼け止めを塗っても、塗り直しをしないと日焼け止めの効果はキープできません。日焼け止めの効果を保つためには、2、3時間おきに塗り直しましょう。ただし、汗をかいたり水を浴びたりした時には、2、3時間の間隔にこだわらず頻繁に塗り直すことが大切です。
うっかり日焼けのアフターケアは?
――うっかり日焼けをしてしまったのですが、どうすればよいですか?
吉木:日焼け後の肌は熱を帯び、水分が蒸発して乾燥しています。皮膚のバリア機能も低下しているので、基本のスキンケア用品を使って、肌を十分に保湿しましょう。ただし、肌に赤みやヒリヒリ感がまだ残っている場合は、保湿ケアの前によく冷やしてまずは肌の炎症を鎮めましょう。
日焼け後の肌は敏感になっているため、普段使っているスキンケア用品が合わないことがあります。敏感肌用のスキンケア用品など、できるだけ低刺激なものを選ぶことをおすすめします。また、化粧水を付けるときにパッティングするのはNG です。できる限り肌に負担をかけないように手のひらを使い、やさしくハンドプレスで浸透させましょう。
若い頃の日焼けはもう手遅れ?
――50代や60代の読者も多いのですが、特に意識したほうがいいことはありますか?
吉木:肌が乾燥する年代なので、クリームタイプのやさしい日焼け止めを使うのがいいでしょう。専用のクレンジングなどを必要としないものがよいかと思います。
――「若い頃は日焼けを気にしないでハワイやグアムなどのリゾートやレジャーに行きまくっていたのですが、もう手遅れでしょうか?」という声も聞きます。過去の日焼けはもう手遅れでしょうか?
吉木:過去の日焼けを帳消しにはできませんが、これからでも防ぐことは大事です。さらに蓄積すると肌老化や皮膚がんの原因にもなりかねません。レチノールが入ったスキンケアは日焼けの影響を少し改善してくれます。